人にやさしい話題

 こういった意見を言うことが、極めて憚られる時代になってきた。

 例えば、名古屋城のエレベーター設置の話。ワシャは、基本的に木造で焼失した天守閣に近い形で復元されるならばエレベーター設置をすべきではないと考えている。もちろんそうなれば、障害を持つ人にとっては天守閣に登るということがとても難しくなる。そういったことを犠牲にしても、歴史には忠実であるべきだというのがワシャのスタンスなのだ。

 歴史的な天守閣を復活するのか、人に優しい展望型天守閣を造るのか、なにを目指しているのかで、どちらにも譲れない一線があってもいい。最終的には名古屋市が決めていくことなのだが、双方に都合のいいものというのは、とても実現するものではない。

 木造建築で歴史的建造物の忠実な再現ということならエレベーター設置は諦める。歴史的なことよりも人に優しい展望天守閣を望むなら鉄筋コンクリート天守閣型ビルディングを建てればいいだけのこと。

 

 もう一つ、今回の参院選山本太郎氏の奇策で当選を果たした筋委縮性側索硬化症(ALS)患者の船後靖彦氏(61)と、重度障害者の木村英子氏(54)のことである。もちろんどのような障害を持っていても社会参加ができる機会があるならば、それは積極的に行っていくべきだし、それを周囲が社会が支えていく仕組みをつくっていかなければいけないと思っている。

 障害のある人にスポットを当てるという意味では、今回の船後氏の当選ほど効果的なことはないだろう。これでALS(amyotrophic lateral sclerosis)が一般的な言葉として人口に膾炙していくに違いない。

 それはそれ、しかし国会議員としては単なるシンボルであってはならない。国会は「国の唯一の立法機関」であり、ここで法が決められなければ国が動いていかない。故に、国会では迅速な決定が求められ、議員たちがそれぞれの立場を代表して喧々諤々の議論をし、審議が深夜に及ぶこともままあるわけである。それに、国民、国家、国益のために常に矢面に立ってあらゆるものと戦っていかなければならない。この戦いを、重度な障害と現に戦っている方に、さらに強いるというのはいかがなものであろう。

 国会論戦に積極的に参戦できるのだろうか?長時間にわたる審議に耐えられるのだろうか?

 だいたい国会議員は、エネルギッシュで、出しゃばりで、灰汁が強く、顔の面が足の裏ほど厚い人物でなければできるものじゃないと思っている。こういったタマでなければ、過酷過ぎる議員活動に耐えられるものではなかろう。

 どうも、山本太郎という稀代のポピュリストにのせられて参議院議員にはめられてしまった、そんな印象を強く感じるのだが・・・。