流白浪燦星(ルパン三世)

 週の初めに名古屋御園座に顔を出した。タイトルの演目を観るためにね。ワシャの数少ない道楽のひとつが歌舞伎であり、この歴は長い。

ワシャの本棚にあるもっとも古い「筋書」は昭和58年10月の御園座のものである。その時は、すべて先代ですけど、勘三郎、松緑、菊五郎、勘九郎、芝翫、吉右衛門、十七代目羽左衛門、七代目梅幸・・・ってすごいラインナップだった。当時はこのクラスが御園座に来ていたんだね(遠い目)。

 年々歳々花相似

 歳々年々人不同

(毎年毎年、花は似通っている。毎年毎年、人は同じからず)

 いろいろな歌舞伎役者が御園座を訪れて、多彩な芸を観せてくれた。彼岸に旅立たれた役者も多い。ワシャは大向うでもうるさかった。

「待ってました!」

「ご両人!」

「成田屋!」

「成駒屋!」

「大和屋!」

 な~んてね(笑)。

 その歌舞伎通が、今回の「流白浪燦星」には驚き、桃の木、山椒の木でしたぞ。

 ワシャが持っている平成6年発行の『歌舞伎ハンドブック』(三省堂)の中に「現役訳者名鑑」があるんだけど、そこに載っている今回の出演者は「市川笑也」だけでした。今回、ヒロインの瀬織姫を演じた「中村米吉」が1歳ですからね。そりゃ載っていませんわ(笑)。う~む、世代交代は進んでいるなぁ(遠い目)。

 さて本題の「流白浪燦星」である。ルパン三世の「カリオストロの城」を原作とし、ヨーロッパの話を日本の中世に置き換えている。主人公は盗賊の流白浪燦星(片岡愛之助)、名前は漢字になっているだけでそのままですね。ヒロインは瀬織姫(クラリス/中村米吉)、次元大介(市川笑三郎)、峰不二子(市川笑也)、銭形刑部(市川中車)はそのまま登場している。愛之助の鬘は、まさにアニメそのもので、衣装もアニメのルパン三世を彷彿とさせる朱色の着物だった。

 石川五エ門は愛之助の二役で、わざわざ二役にして早変わりの妙味を見せようという魂胆だ。さらに座頭の愛之助は、三代目猿之助のスーパー歌舞伎のDNAをしっかりと継いでいる。三幕第二場 摘星閣大屋根の場では、流白浪と瀬織姫の宙乗りを見事にやってのけた。客席にも降りてきて、客に話しかけたりするから御園座は大騒ぎである。

 古式に則った歌舞伎と、現代アニメの「ルパン三世」を合体させて、いいエンタメに仕上げている。舞台装置も御園座にしては頑張ったなぁと思う。12場面という展開、場面数も多いのだが、その上に豪華でかつ大掛かりだった。

 古い歌舞伎通からは「もっと古典寄りでなければ」とかいう意見もあるようだが、

そんなことを言っているのは歌舞伎を知らねぇ素人と言わせてもらいやしょう。常に新しいものを出していき、その中からいいものを伝統として紡いでいく。それが歌舞伎の本道でございます。チョーン(柝の音)。

 

岸で盛り上がり春灯の居酒屋へ

 午前中、所用で凸凹商事に顔を出し、その後、2か所を用務で回ったら、昼になってしまったわい。

 昼飯を食いながら、昨日の定例の読書会を振り返りたい。

 課題図書は『岸信介』(岩波新書)。ワシャの感想は4月11日、12日であらかじめ書いたが、メンバーの発言を含めいくつか並べておく。

「佐藤栄作はよく知っていたが、兄の岸信介については知らないことばかりだった。沖縄返還も岸が関わっていたんだね」

「岸は『フィクサー』と呼ばれるが、『フィクサー』というのは、笹川良一や児玉誉士夫のようでイメージが悪いように思う」

「弟のほうが色男だ」

「日産が日本産業というコンツェルンだったとは知らなかった」

「満州では東條英機とも連携をしていたんだね」

「岸はアヘンを上海や香港でさばくルートを押さえており、そういった角度から見て『フィクサー』と呼ばれたのではないか」

「岸は読書家だった。このことが巣鴨の刑務所で3年余を快適に過ごせた要因だろう」

「岸の狂歌の『退屈は心貧しき証左(しるし)なりと教えし人を想ひ見るかな』はとてもいい」

「30万人のデモが首相官邸に押し寄せた時に『死ぬなら首相官邸で』といった岸の心境は大したものだ」

 などなど、いつもはあまり発言をしないメンバーも、今回は本全体に付箋が貼ってあり、全編にわたって意見を言っていた。よかったよかった。

 おおむねメンバーの岸信介への評価は良好だった。ワシャは岸を支持するものであるのでホッとしましたね。

 読書会後、いつもの居酒屋に行って楽しいお酒を飲んだのでありました。めでたしめでたし。

ジェンダー、20世紀の遺物

 おはようございます。

 夕べ、名古屋の名駅前で仲間と一緒にちょいと飲んでしまいました。家に戻ると各所からメールがいて、その対応をしていましたら時間は刻々と過ぎていき、自分のことがお座なりになってしまいました。「またご挨拶をさせていただきます」と言っておきながらいい加減なヤツとお笑いくだされ。

 さてそれでお許しいただき、今日の朝日新聞紙である。社会面に《女性議員増へ キャリア積める環境を》

https://www.asahi.com/articles/DA3S16443190.html

《戦後初の衆院選で、女性国会議員が誕生して今年で80年。国会の女性議員比率はいまなお、2割前後にとどまる。ジェンダーと政治に詳しい上智大の三浦まり教授は、女性議員の数を増やすと同時に、キャリアを重ねていける環境を整えることも大切だと指摘する。》

というニュースがあったが、ネットではこれだけのチラ見せ。残りは紙面から搔い摘む。

 上智大の女性教授は言う。

①「候補者数を男女均等にする法律が成立し24年の衆院選で15%を超えたが、諸外国に比べてまだまだだ」

②「地域のお祭りや飲み会というインフォーマルな場への参加が求められ、ケア労働の多い女性には不利」

③「有権者がもっと能動的に政治家を見る力を養え。そのためには、選挙期間を延ばして公開討論をやれ」

④「クォーター制の導入や女性候補の割合が少ない政党への政党交付金減額などを考えろ」

⑤「ジェンダー政策を進めるには、女性議員がキャリアを重ねていける環境を整えろ」

⑥「以上は女性だけの問題ではない。公正な仕組みができればいろいろな人が議員になりやくすなり健全な民主主義が出来あがる」

 と、バカなことを言っている(笑)。

 まず①、「国」にはそれぞれの事情があり、戦乱のために男性の人口が少なくなってしまって、政治を女性が担っているというところもある。一概に言ってはいけない。②は、政治以外にすることがあるならば、当然のことながらそっちのことをすればいいだけのこと。政治をやりたいのなら「政治」の本分を追求したいのなら、その他のことは残念ながら諦めよう。高市首相だっていろいろなものを犠牲にして政治をやっている。その覚悟がないものは男女を問わず、政治などやるものではない。

 そして③である。ジェンダーに詳しい教授さんよ、もう少し現実を見なはれ。有権者の一定数は「能動的に政治家を見る」ことができるだろう。そのための「公開討論」もしっかりと聴くかもしれない。しかし毎回の選挙で半数が投票に行かないのが現実で、その行かない連中は「公開討論」など何百回やろうと聞く耳は持たないのである。さらに選挙に行く半数ですら、宗教がらみや思想がらみ、候補者がきれいだから、カッコいいから程度の感覚で投票行動を起こしている。

 クオーター制を主張する④だ。現行の選挙制度は、それでも民主主義を体現している。しかしある一定数をある条件の候補者に割り当てるのは、その民主主義さえ否定することになる。愚民の有権者であろうと、彼らが選んだ人が政治家でよろしい。そこに変な作為をほどこすなかれ。

 ⑤などひと言で終わる。「女性議員がキャリアを重ねていける環境を整えろ」?現在の首相は高市さんであり、優秀な政治家である。キャリア積めてるじゃん。

 最後の⑥、「いろいろな人」ってどんな人?女性に男性、いまのところそのどちらかで絶対に立候補できますよね。このジェンダー教授の言う「いろいろ」って、それ以外に色分けする必用があるの?なにを「いろいろ」の中に入れようとしているんだろう(恐)。

謹告

 午前8時を少し過ぎましたが、 本日はちょいと忙しく、もう家を出なければなりません。夕方には戻る予定ですので、そこからまたご挨拶をさせていただきます。では、行ってきま~す。

引っ張りますよ~岸さんを

 引き続き岸信介のことである。再勉強してみるとこの政治家の大きさに改めて驚かされている。

 なにしろ地獄のような巣鴨プリズンを糧にしてしまうのだから。『岸信介』(岩波新書)には《獄舎の岸に精神的苦悩と肉体的苦痛はあっても、退屈という名の苦しみはほとんどなかった》とある。その理由として「読書への執着」であり、ジャンルを問わず「読書に熱中寸暇を惜しむ」状態だった。

 岸はインタビューに「暇を持て余すことなど決してなかった。人の退屈は発想の欠如による」と答えている。そしてこう詠む。

「退屈は心貧しき証左(しるし)なりと教へし人を想ひ見るかな」

 勉強になります、岸総理。

『岸信介 最後の回想』(勉誠出版)から岸の言葉を引く。

「頭はいつも使って、心はいつも和やかなことを思う」

「本当に最後の決断と言うものの時は、誰に相談することもできない。自分自身で決めなきゃならん」

「安政の大獄みたいに、別に法律があって罰せられるんじゃない。買った奴が敗けた方を、処分するんですからね。(中略)法規があって、その法規に違反する奴が、罰せられるのなら分かるけれども、戦犯は法も何もないんです」

と言いながらも監獄での生活をポジティブにこう笑う。

「役人をした時代から、非常に不規則でしてね。夜は遅いし、時間も不正確な食べ方をしているし、そういう日常を送っておったのですよ、急に三年三カ月の間は規則正しいい健康管理をされてもらった」

「首相の仕事が忙しい」と愚痴を言っていた首相もいたようだけど、ゲルゲール、岸総理のように常に前向きでなくっちゃモノの役には立たない。

 そうそう、我が師匠の呉智英さんと仲のいい宮崎学さんも岸信介について書いている。『安倍晋三の敬愛する祖父 岸信介』(同時代社)である。ここから引く。

《巣鴨の岸信介は、東京裁判の正当性を批判し、かつみずからが指導した戦争が正当な自衛戦争であったことを主張している。》

 戦犯として捕まっているにも関わらずすごいですよね。ひとつ間違えれば絞首刑になるんだから。上記の文章の直後に岸の比較として、内大臣だった牧野伸顕の行動が載っている。

《獄中では、たとえば、かつての内大臣・牧野伸顕のように、他を押しのけて残飯を漁ったりしてひんしゅくをかうようなあさましい姿をさらすものも少なくなかったが、岸はそういうことはなく、ずっと意気軒高だったようである。》

 ワシャが岸信介を好きなのは、こういった人として屹立しているところである。そしてこの兄にしてこの弟(佐藤栄作)あり。この祖父にしてこの孫(安倍晋三)あり。

 政治家とはかくあるべし。この人たちに比べて、今の政治家の不甲斐ないことよ。ぜひ高市首相には岸信介に学んでいただき、牧野伸顕のようなはしたない政治家にはならないでくだされ。

岸信介

 次回の定例読書会の課題図書が、原彬久『岸信介』(岩波新書)なので、ちょっと岸信介のことをおさらいしている。元々歴代の中では好きな首相である。理想主義者でありながら現実主義者で、行動的なのだが軽率なところがない。さっぱりとした性格で覚悟を決めるのも早かった。

 有名な話だが、昭和35年6月、新安保条約が自然成立する前夜に33万人のデモが国会周辺を包囲し、首相官邸に押し寄せようとしていた。その時、首相官邸を警備する警視総監からは「一刻も早くお逃げください」と岸首相を急かしたという。これに対し岸首相は「オレはここにいる、ここで死ぬよりほかにないじゃないか」と答えたという。同席していた大臣たちには「それぞれ責任をもつ役所があるから、皆さんはお帰りなさい」と促した。そうしたらみんな帰っちゃった(逃げちゃった)んだとさ(笑)。

 ところがどっこい、弟の佐藤栄作だけはそこに残り「兄さん、ここで一緒に死のうじゃないか」と言う。ううむ、この兄弟、やはり只者ではない。

 結局、バカの集まりだったデモの連中は、首相官邸を襲撃せずに終わったのだが、ここに参加していた労働者、学生などに「安保って何?」と問いかけると、「そんなもの知らない!」と大見得を切ってデモをしていたそうな。「安保」を知らずしてデモをしているって完全にアホでしょ。このデモ隊のDNAが辺野古の事故を起こした活動家につながっていることは間違いない。

 岸信介の凄さは並み居る政治家たちに大きく水を空けている。比較するのも岸に失礼な話だが、同じ首相としてゲルゲ~ル石破との差はいかばかりであろうか。もう手遅れだとは思うが、岸信介の一生を読み直してみろよ。

 岸信介、東京帝大を卒業し官僚なる。その時期にロンドンをはじめ欧州を半年にわたって歴訪する。さらに満州国建国に深く関わり、40歳で満洲に渡る。その後、精力的に支那各地を視察し、帰国して東條内閣で政治家でもないのに商工大臣に就任する。

 この結果、戦犯とされ巣鴨プリズンに収監されてしまう。そして3年余、刑務所暮らしとなるのだが、今の快適な刑務所とはわけが違っていた。『岸信介』(岩波新書)にも記載があるけれど、敗戦国とはいえ高位高官にあった収監者に対して「暴虐」と言っていい仕打ちをGHQから受けている。岸は、猿股まで取り上げられた。本から引く。

《裸体検査も(昭和21年11月)以後頻繁に行われた。寝衣やマクラを奪われ、読み掛けの本を取り上げられ、(刑務所内を)散歩中に室内の所持品を持ち去られ、便所の落とし紙の配給を停止されるというありさま》

 岸はこれに2年余も耐え抜いた。

 申し訳ないが、官僚の息子としてのうのうと東京でお育ちになって、ゲルゲール、オヤジのコネで銀行に入社したものの、そこを4年で辞めて、政治家に転身をする。4年では銀行の仕事もよく解らないでしょう。なにも身につかないまま政治家になって、それから40年も政治家を続けておられるんですが、果たしてなにをやってきたことか(溜息)。

 それに比べて、岸信介である。東大在学中23歳で大川周明、北一輝(この人がワシャは好きなんですがね)と政治結社結成。その後、官僚になって大活躍し、東條内閣で45歳の商工大臣になる。それが罪に問われ、戦後に49歳で刑務所入り。出所が52歳、公職追放解除が56歳。57歳で自由党に入党して、衆議院議員に初当選。58歳で党幹事長、61歳で内閣総理大臣となっている。そこから馬車馬のように走って走って日本のベースを造り上げていった。

 歴代の中でも傑出した首相と言っていい。

百田氏のXの発言について

 今、インスタで話題になっている東京まななという女性。この人が日本保守党代表で作家でもある百田尚樹参議院議員ととニコ生で対談した。

 本番前にまなな氏が「なぜ、大臣や総理になるために必死になるのかわからない。また何も仕事をしていないのに議席にしがみつく議員がこんなに多いのかがわからない」というような疑問を百田さんに投げかけたそうな。

 これに対して百田さんは深層的な理由を語ったという。

《様々な分野でトップレベルになるには才能がいる。スポーツ、学問、芸術、芸能、ビジネス、企業ets・・・。そうした才能のない人は、どんなジャンルでもトップになれないし、金も稼げないし、有名にもなれない。しかし政治の世界は、何の才能ももたない凡人でもトップレベルになれる可能性があるし、金を稼げて、有名にもなれる。だから政治の世界は(国政にも地方議員にも)、才能がなくて欲望だけが非情に強い人間が集まる、と。》

 これは言いっぱなしではなく、こう付け加えている。

《※言うとくけど、上の理由はかなり乱暴に言ったもので、一部の才能ある政治家を否定するものではない。理想に燃えて日本を何とかしたいと思っている政治家もいる。問題は、そういう政治家がめちゃくちゃ少ないことだ。》

 これらの百田発言について感じたことを言いたい。

 全体として「政治家」という輩はそういう傾向が強い。国政にも地方議員にもあきらかに名誉欲、金銭欲を隠しながらも、それらの欲をボロボロと滴らせながら政治家になろうとする人は数多くいる。目的とする仕事があるのではなく、とにかく政治家になることが目的という例は後を絶たない。

 あるいは政策が語れないので「地域のために」というのを前面に押し出してくる。これって政策を知らない無能の烙印と言っていい。でもこれで当選する保守系議員のいかに多いことか。

 このあたりは百田さんの言われるとおりだと思う。

 ただ1点だけ違和感を抱いたのは、冒頭の「トップレベルになれない人」についてのくだりである。百田さんとしては「無能な政治家」を揶揄していったものだが、これは才能のない大多数の人間にはちと厳しすぎる発言である。

 百田さんは、大ベストセラー作家であるし、政党まで立ち上げ、そこの代表であり参議院議員でもある。ある意味で功成り名を遂げた人なのだ。

 そのレベルの人から言えば、大半の人は「才能のない、トップになれない、金も稼げない、有名にもなれない」の中に入っている。残念ながら百田さんの発言は、「無能な政治家」を貶めるために、国民として普通に生きている庶民まで足蹴にしているような文章になってはいないか?

 ベストセラー作家ではないし、メジャーのトップ選手でもない。総理大臣にもなれないし、ユニクロの社長にも、郷ひろみにもなれません。でもね、政治家になろうなんて思いませんよ。

 あ、一人だけバカがいたなァ、公務員を途中で辞めて議員になったモノ好きが。でも、そいつは自分のするべき仕事をやり終えたら1期で辞めちまいやがった。余談でした(謝)。

 百田さん、追記で《一部の才能ある政治家を否定するものではない》と言い訳しているが、その前に、ワシャを含めた「才能のない、トップになれない、金も稼げない、有名にもなれない」人たちを、高みからやや見降ろしている感じがにおいました。無能な人間のヒガミですけど(笑)。