夏の騎士

 百田尚樹さんの最新刊『夏の騎士』(新潮社)を読了。爽やかな少年ドラマが、うつろいゆく午後の夏の日差しのように展開していく。いい話だと思う。

 ただ、百田さんが、「虎ノ門ニュース」の中で『夏の騎士』の紹介をしている時に言われたフレーズが、小説の組み立て方とかドラマのシナリオ構造を勉強した者には、大きなヒントになってしまって、ほぼ「ネタバレ」の状況になってしまった。

 読者が後々、作品を噛みしめてみて「ああなるほど」と気づけばいいことを、先に百田さんが言ってしまった。これには、有本香さんも顔をしかめておられたが、なるほどそういうことであったか……と、読み終わって合点がいった。

 ぜひ、皆さんには無垢な状態で『夏の騎士』を楽しんでいただきたいので、ワシャはなにもいいません。なんの予備知識もなしで、本に向き合ってください。きっと最後のところで、じんわりとしたいい心持ちを味わえると思いますぞ。

 

 今朝の朝日新聞ニュース。京アニ放火事件を受けて《ガソリン容器への販売 政府が身元確認を要請》したという。《ガソリンを持ち運ぶための専用容器に入れる形で販売する際、購入者の身分証を確認するほか、使用目的を尋ねた上で販売記録を作成する》のだそうな。ううむ、ということは、身分証を提示し、嘘でもいいので使用目的を言うことができればガソリン容器への購入は可能なんですね。

 なにも解決になっていないじゃん。車のタンクにガソリンを入れるのは、いつでも誰でもどこでもできるのだから、スタンドで入れてきたガソリンを自宅で別の容器に移し替えればいいだけのことですわな。

 なにもしないよりはいいとは思うが、もう少し考えて対応策を打ち出してくれ。霞が関の秀才君が思いつくのはこの程度のことか。

 もう少し踏み込んでさ、例えば青葉某がホームセンターでガソリン容器を2つ購入している。その時に同じホームセンターでライターと着火剤と台車を購入していたとしたら、「この組み合わせは明らかにおかしい」と、ホームセンターの従業員が気付かなければいけない。そういった不自然な買い物にこそ目を光らせて、警察に通報する仕組みを考えるべきだろう。

 

 などと、ワルシャワは、とくに霞が関の官僚に対していつも厳しい発言をしてきた。いわゆる「秀才バカ」と揶揄してきた。でもね、『夏の騎士』の中にこんなフレーズがあった。

《大人になって理解したことがある。世の中には、一流大学に合格する人は勉強が好きな変わり者だと思っている人が少なくない。》

 ワシャもそうだ。そう思うことで己の貧弱な学歴からくるコンプレックスを紛らせているのである。続ける。

《もちろん一部にはそういう人もいるだろうが、優等生にとっても、やはり勉強は面白くないのだ。ただ、彼らはその苦痛を充実感に変えたり、その結果得られることを、楽しさに変換しているだけなのだ。》

 そう考えると、愚策を展開する霞が関の秀才君たちも、勉強のアスリートだったんだなぁと感心する。しかしやはり東大に入るまで、鍛えに鍛えた頭脳を、その後、日日の鍛錬を怠たってしまって、頭脳アスリートとしての筋肉を鈍らせてはいないだろうか?前川さん。

『夏の騎士』の136ページから137ページにかけて、勉強の必要性が書かれている。これはぜひ子供たちに読ませたいところだ。ワシャも小学校でこの作品を読んでいれば、もう少しまともな人間に育っていたかもしれない(笑)。