エレベーター問題

 安倍首相が、大阪城にエレベーターを付けたことを「大きなミス」と発言し、炎上している。

https://www.asahi.com/articles/ASM6Y5HP1M6YUTIL00X.html

 そのことに関連して、今朝の朝日新聞で河村名古屋市長が理解を示した。河村みゃーみゃーさんは「エレベーター設置反対」なので、まあそうなるわなぁ。

「安倍さんは、伝統や文化を大事にせないかんと。そういう気持ちで話したんでしょう」

 おそらくそうでしょうね。ワシャもそう思う。この点だけは、みゃーみゃーさんと意見が一致する(笑)。

 この騒ぎに乗じて、「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」なるものがまた声を上げた。「首相には、誰でも公共施設を利用できる社会を実現していただきたい」と、エレベーターを設置しない名古屋市の方針を撤回しろと言う。

 

 このことに関してワシャは違う意見を持っている。確かに公共施設はバリアフリーにするべきである。障害者の方が利用するのに一切の障害があってはならない。ただし、名古屋城が公共施設かというといささか疑問を持つ。

 ワシャは城好きである。とはいえ、春風亭昇太師匠ほどのマニアではない(笑)。そして建造物にはあまり興味がない。どちらかというと外郭土塁、石垣、外堀、内堀などの構えに興味がそそられる。美しく再建された天守閣もいいんですよ。でもね、やはり歴史の上に残存しているそういった痕跡からかつての城を思い起こす……そういった作業が好きなのである。

 もちろん天守閣でも、戦国期、江戸期の姿を残しているものについては、いかにも妖(あやかし)が潜んでいそうなその古寂びた風格を愛している。でもね、最上階に行くと、土産物が売っているようなコンクリート製の天守閣があるでしょ。ああいったのはいただけない。そもそも天守閣から21世紀の街並みを見下ろしても感慨はわきませんわなぁ。まぁワシャの場合は、その地形だけを捉えて、街並みを全部消して見るという特技を持っているので、戦国期の風景を望むことができますがね。

 話がいつもどおり脇道に逸れまくっているが、名古屋城は公共財ではあると思うが、公共施設かというとそれは違う。今の鉄筋コンクリート製のまがいものは公共施設としてもいい。ドテッパラにエレベーター棟を突っ込まれた文化財などあり得ないからね。でも、名古屋市は苦肉の策として、エレベーター棟の東に大きな樹木を植えて、アキラ100%がお盆で股間を隠すようにして景色をつくっている。

 ただし、木造でこれからの千年を継承していく天守閣の再建となると、これは話が違ってくる。できたばかりではもちろん文化財ですらない単なる新築家屋である。だか、それを名古屋市民が子々孫々に伝えていくことで、文化財に育て上げられる素材なのだ。残念ながら、木造の中に鉄骨を組み込んでエレベーターを設置し、かつての図面とまったく別物に仕上げてしまえば、それは公共施設でしかなく、永い歳月を経ても文化財にはなるまい。妖も棲みつくとは思われぬ。

 

 ワシャはエレベーターを設置する再建ならしないほうがいいと考える。現在の鉄筋コンクリート天守が耐震性に疑問があるというなら、撤去するだけにして、価値のある石垣を大切に保存する。あるいは、耐震性に問題があるなら、天守閣は立ち入り禁止にして、そういたら健常者も障害者も関係がないから、ドテッパラのエレベーター棟を撤去して、風景としての天守閣に撤する。それでいいんじゃないの。名古屋市の俯瞰は、高層ビルが山ほどあるんだから、そちらから楽しめばいい。そういったことと歴史を実感するということは違うことなのである。