それでもいい舞台だった

 演出ジョン・ケアード、出演は内野聖陽國村隼貫地谷しほり浅野ゆう子など。
 シェイクスピアの『ハムレット』である。先日の「穂の国豊橋芸術劇場」での公演に行ってきた。4月9日の初日から5月26日までの全国ツアーである。その最終に間に合った。「行くべきか、行かざるべきか、それが問題だ」などと迷わなかった。2月に豊橋に出かけたとき、チラシを見つけて速攻で決めた。
 ハムレット(王子)を内野さんが演じる。昨年のNHK大河で徳川家康を青年期から老年まで演じきった。現状の中堅俳優の中で、もっとも安定をしている一人であり、名優の風格さえただよいだしている。
 内野ハムレットにからむのが、國村クローディアス(国王)である。この二人のやりとりが真剣を交えているがごとく、舞台で火花を散らす。
 國村さんのもう一役の亡霊もよかった。真四角の舞台の中央から登場する先王の亡霊は、能の修羅物の一場面を観るようであった。國村さんしかり、演出のジョン・ケアードもかなり能も研究しているようだ。
 貫地谷さんは美しい人ではあるが、オフィーリアの繊細さを演じるには、少ししぼったほうが良かっただろう。白のドレスパンツからはかなり太めのピップラインがわかってしまった。ウエストもオフィーリアの許容を越えている。
 浅野さん、発声が舞台用に訓練されていない。もちろんその存在感は圧倒的だが、これに声が伴うと、おもしろい舞台俳優に育っていくと思う。大柄で綺麗な方だけに、そこが惜しかった。