ウラー!

 タイトルの「ウラー!」はロシヤ語の「万歳!」を意味している。そして大相撲好きの方はこう睨むだろう。「おそらくワルシャワは宇良の活躍について書こうと思っている」と。
 ご明察!
 大阪府寝屋川市出身25歳。木瀬部屋の前頭四枚目の宇良のことである。体重は134㎏あるけれど、身長が174㎝と小兵。昨日は大関の高安との一番で大健闘をみせた。残念ながら高安の強引な首投げに敗れたが、好一番であった。17日には、初顔合わせの横綱日馬富士をとったりで破っている。初の金星である。この若者の殊勲インタビューが泣けた。
https://www.youtube.com/watch?v=uzaNKQ68ufU
 これほどまでに純粋な若者がいるだろうか。真面目にコツコツと練習をし、土俵も飄々とつとめ、勝っても負けても楽しそうに相撲に取り組む。顔がいい、好奇心旺盛な小動物のような目がかわいい。

 おそらく戦前にはこんな純朴な表情をした青年が日本全国に山ほどいたんだろう。こすっからくないというか、打算的でないというか、体を動かすことを厭わない若者が、坂の上の雲を目ざして必死に働いてきた。その結果として、東洋のまことに小さな国が欧米列強と伍する国に仕立てあがった。
 宇良からなにもそこまで思うことはないかもしれないが、思っちゃったんだから仕方がない。
 宇良のように戦前の若者は優秀だと言った。しかし日本は戦争に敗けた。なぜか。それはその若者たちを率いた士官学校出身の頭でっかち将校に愚か者が多かったせいである。
 アメリカの将軍が言っている。
「日本軍は、将校は馬鹿ばっかりだったが、兵士は優秀だった」

 そういった歴史を思い出させるほど、宇良の純粋さは大相撲の中でも突出している。ずるくて卑怯な、勝てばいいという力士が増えてきた中で、一服の清涼剤と言っていい。

 話はすでにそれ出しているが、もう少し脇道にいく。
 横綱白鵬千代の富士の記録を抜いた。今朝の朝日新聞のタイトルは「白鵬悠然千代の富士超え」だった。ワシャ的には「それがどうしたの?」という話である。
 通算勝ち星という記録がある。魁皇が歴代1位で1047勝である。一昨日までは千代の富士の1045勝が2位だったが、白鵬があっさりと追い抜いた。おそらく魁皇の記録も今日、明日で超える。
 大相撲のもっているいろいろな記録が白鵬一色に塗り替えられている。強いと言えばそう言うことなのだろうが、ただ単に勝てばいいという姿勢は、好感が持てない。それに、相手が土俵を割っているにも関わらず、ダメ押しの一発で土俵下に突き落とすし、勝って土俵上で笑うし、懸賞金をむんずと掴んでガッツポーズはするし、花束をもらえば花道で両手を振って喜ぶ。プロレスならそれでいい。しかし、大相撲はスポーツではないのだ。国技、神事、文化、歴史なのである。
 モンゴル帝国では最強であることが価値の最上位にあるのだろうが、日本では「気が優しくて力持ち」でなければならないのだ。単に強いだけで記録に残っても、記憶に残らないのではだめだ。

 そんな中で宇良の活躍は日本の若者の強靭さをあらためて感じさせてくれた。ここ2〜3場所を見ても記憶に残る力士である。勝って驕らず敗れて泣かず、まさに武士(もののふ)ここにあり。

 ここからがタイトルの種明かし。
 その彼を見ていて、コミックの『皇軍の守護者』の新城直衛中尉を思い出した。
https://search.yahoo.co.jp/image/search?rkf=2&ei=UTF-8&gdr=1&p=%E7%9A%87%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%AE%88%E8%AD%B7%E8%80%85
 ひたむきに戦略を組み立てて、ひたすら戦う。そして前しか見ていないその姿勢が宇良に似ているのだ。
 このコミック、架空の世界の戦いが描かれている。サーベルタイガーが駆け、竜が空を飛ぶ荒唐無稽の話なのだが、なぜか皇軍の国民は漢字の名前だし、新城直衛って完全に日本人の名前でしょ。対決する帝国はロシヤかドイツを髣髴とさせる。将軍の名前は、ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナだし、突撃の時に掛ける雄叫びは「ウーラン!」(万歳)なのだ。
 宇良を見ていて、新城中尉を思い出し、その1巻で突撃する帝国軍の掛け声と「宇良」を掛けたという単純なタイトルでヤンス。お粗末でした。