宇良はいい、いい本もいい

 大相撲夏場所が始まった。2日目で十両西の2枚目の宇良は2連勝と頑張っている。昨日は東十両筆頭の炎鵬との一番で、おそらく幕内・十両の取組の中ではもっとも人気があったのではないか。先場所と同様に離れて牽制を仕合うのかと思いきや、組んで炎鵬が土俵際まで宇良を押し込んでいった。離れて取るのを得意とする宇良なので、不利に見えたが、土俵際で炎鵬の左腕をひねってきめ出しで、炎鵬を土俵の外へ出してしまった。上位33番の内、この一番がワシャ的には盛り上がった。

 さて、「文藝春秋」の6月号が昨日発売にで、さっそく駅前の本屋さんで求める。昨日は別の本も入手していて、そっちを中心に読んでいたので――相撲は観なくっちゃいけない、本は読まなくっちゃいけない、酒も飲まなくっちゃいけない、さらに今日の会議の資料12頁の内容を確認しなければならない――、だから「文藝春秋」はざっと目を通しだけだった。

 そこで連載の「大相撲新風録」を見つけた。連載の4回目なんだけど6月号は宇良なんですよ(嬉)。宇良の古武士のような静かな面差しの写真が載っている。感情を露わにして土俵に上がるモンゴル力士とは対極にある名力士と言っていい。

「新風録」では、小兵の業師の宇良と、やはり小さな貴公子炎鵬の取組のことが取り上げられていた。先場所の10秒の攻防、いい一番でした。炎鵬は宇良の2学年下で、小兵の宇良の活躍を見て、各界入りを決めたという。敗戦後に炎鵬はこう言った。

「宇良関しか持っていない雰囲気というか、すごいものがある。負けはしたけど楽しかったです」

 これに対して宇良はこう言っている。

「炎鵬関もオーラがあった。小さい体で正面からぶつかって来るんで、大きな相手よりやりにくいですね。対戦が楽しみ?それはないです」

 宇良らしい。今場所も応援しまっせ。

 

「文藝春秋」をそっちのけで読んでいたのは、松本創『軌道』(東洋経済)だった。16年前の4月25日に発生した「福知山線脱線事故」のルポである。これが重かった。読み始めたら止められなくなってしまった。

 ある遺族の視点から書かれていて、事故以降の経験は激烈だ。ワシャは比較的人のことが理解できるタイプだと思っていたが、主人公の経験を読んでみて、まったく思いを馳せられていなかった。

 いやはや~、今日の会議資料を読んでいる暇がなくなった。しかし『軌道』は読んでよかったと思っている。主観だけではなにも見えてこないのだということが分かっただけでも人生の糧になったわい。わ~い。