職業

 ワシャの父親は教師だった。嫁の実家の父親は大工だ。教師にしろ大工にしろ、ワシャに跡を継げと言われても、そう簡単に継げるものではない。ワシャは教員免許を持っていないし、無垢板に鉋なんぞかけられるものではありませんぞ。今の年齢34歳(嘘笑)を考え合わせても、とてもじゃないがその職業で一端になることは難しい。
 ところが世の中には、楽に跡を継げる仕事というものが存在するんだね。父ちゃんのやっていたことを娘が継ぎ、亡き夫の仕事を主婦しかやってない妻が継ぐ。父親の跡を突然、息子が継ぐというのが最も多いパターンだ。
 さてこの誰でもすぐに何千万円もの収入が保証されるおいしい仕事と言うのはなんでしょう?答えは簡単ですよね。「政治屋」さんでした。

 ワシャがコンサルタントとしましょう。そしてある会社の仕事を請け負うチャンスがあったとします。その仕事の打ち合わせに行って「依頼された仕事の内容についてはまったく知りません。今から勉強をはじめて、この仕事に取り組みます」と言ったら、まずその仕事はもらえない。普通の社会の常識では仕事はプロがするものだからだ。腕に覚えのないものに出る幕はないのである。
 でも「政治屋」だけは、この非常識が許されるんですな。国際情勢も、経済の仕組みも、イラクの位置すら知らなくとも「今日から勉強しま〜す」で済まされる世界なのだ。こんな甘い業界をワシャは見たことがない。そしてこんな甘い連中に己の命を託さなければならないのかと思うと背筋が薄ら寒くなってくる。