自分が通っただけの冬ざれの石橋 その1

 昨夜、隣町の駅前で会社の先輩と飲んだ。その方が今度の春に退職される。そのささやかな送別の宴だった。肴はね、40枚ほどの写真だった。それを見ながら酌む酒は一入美味い。
 ずいぶん昔の話になる。その先輩Tさんと仕事でチームを組んだ。Tさんは自転車が趣味の人だった。どういう経緯でそうなったのか忘れてしまったが、その年の慰安旅行に自転車で行くことになってしまった。愛知県内の近場の温泉だったが、それでも片道30キロほどある。今なら大した距離ではないと思うが、なにしろ始めてのサイクリングだったので、30キロは途方もない距離に感じたものだった。
 結局、そのサイクリングでTさんにのせられてしまった。思いのほか楽しかったのだ。その後、すぐにロードレーサーを購入し、以降、奥三河を周回(100キロ)したり、琵琶湖を一周(180キロ)したり、1日で富山まで(270キロ)走ったり、石川県内灘町のロードレースに出場したりと自転車三昧の日々を送った。一時期など昼休みに昼飯そっちのけで走行練習をするほど入れこんでいた。それらの実績が評価されたのか、社内でクラブとして認められた。お蔭で活動費までもらえることになった。以降、現在までそのクラブは続いている。
 その折々、サイクリングやレースに行った際に撮りためた集合写真25年分が肴だった。
 いやー、ワシャも25年前はほっそりしていて、厚顔(けっして紅顔ではありません)の少年だったわい。
(下に続く)