キャンプの思い出

 まだワシャが20代の頃の話である。職場の組合が主催するサマーキャンプ研修に参加したことがあった。バス2台に分乗して行ったから、総勢100人くらいはいたんでしょうね。行く先は愛知県瀬戸市の山中にあるキャンプ場だった。
ワシャは基本的に大勢で盛り上がるというのが下手で、お祭りなんかも苦手なのだ。にも関わらず、入社当時から親切にしてくれた組合役員の誘いを断りきれずについてきてしまった。

 到着するとキャンプ場入口で入村式と称する儀式が始まった。異様にはしゃぐ職場の連中を横目で見ながら、早速、後悔をした。それでもね、ついて来た以上、仲間を白けさせてもいけないので、班長の指示に従い、同じ班の女子職員と一緒に炭を運んだり火を熾したりしてせっせと働いた。そうやっていればワシャも当時は「ナウなヤング」じゃ。だんだんと楽しくなってくるわサ。夕食の支度、班ごとでの夕食、キャンプファイアーなどが続いて、瀬戸の夜は更けてゆくのであった。
 このキャンプ研修でカップルになって、そのまま職場結婚するというケースがけっこうあるからあなどれませんぞ(ワシャは違うけどね)。
 深夜、ワシャは役員のバンガローで数名の役員と酒を酌み交わしていた。政治の話からイデオロギーの話になって、少し左系の役員とワシャが議論になった。そこまではよかったのだが、その役員の舎弟のような男が「君の言い方は失礼だ!」とか言い出して話がこじれた。
 まだワシャも血気盛んな頃だったんですな。「表へ出ろ!」という言葉に応じてしまったのだ。しかし柔道、相撲、少林寺憲法に精通し(笑)、ブルース・リーの「燃えよ!ドラゴン」を10回観たワシャに青二才のインテリが勝てる道理がない。雨上りのキャンプ上で取っ組み合いをしたので泥だらけにはなったが、完全勝利を納めたのじゃった。めでたしめでたし。
(下に続きます)