キャンプの思い出(続き)

(上から読んでね)
 しかしその後、役員たちに囲まれて「君は組合活動には不向きだ」とか「和を乱す」とか言われたので、「それでは失礼します」と挨拶をして、荷物を担ぐとさっさと山を下りてしまった。
 時刻は午前2時、山の中の道を数キロ歩いて瀬戸の私鉄の駅前に着いたのは午前4時だった。もちろん電車など動いている時間ではない。「始発まで待とうか」とも思ったが、格闘のせいで泥だらけである。これで電車に乗るのは余程の面の皮が必要だ。ワシャの皮は薄い。「そうだ!タクシーで帰ろう」そう思い付いたが、この時間帯に田舎の駅前にタクシーなど居るわけがない。そこでワシャは公衆電話でタクシーを呼んだのだった。
 10分ほどでタクシーは来た。駅前の街灯の下で手を振ると、タクシーは近づいて来る。ドアが開いて「どちらまでですか?」と聴かれると思っていたのだが、タクシーはワシャの姿を確認すると、そのまま素通りして闇の彼方へと消えていった。乗車拒否かい!
 仕方がないので、他のタクシー会社に電話をした。今度こそ逃がすわけにはいかないので、街灯の下を避けて暗がりの中に立って待っていると、やって来ましたぞ。
運転手は人影は確認したんでしょうね。ゆっくりとワシャに近づいてくるではあ〜りませんか。タクシーは不運にもワシャの前でドアを開けてしまったのだ。これを逃しては三河に帰れない。ワシャは、髪不容髪(カンハツをいれず)、タクシーに乗りこんでしまった。
 あとは嫌がる運転手を説得して、悠々と家に帰ったのだった。めでたしめでたし。

 今から大阪に行きます。司馬遼太郎記念館の話は明日の夜にでも。