盛り上がった夏の両国

 千秋楽に優勝の可能性がある力士が5人もいるというのは、好角家としてはちょいと不甲斐ないとは思う。14日目では7人、13日目に11人もの優勝圏内がいた。

 まぁ横綱不在であるし、2大関も休場をしていることもある。残った大関豊昇龍も10日目までに4敗を喫していた。そういったこともあって夏場所は大混戦といった状況だった。

 12日目を終えて、前頭10枚目の湘南乃海が2敗で単独トップになった。残念ながら、この力士、それほど器用な相撲を取る人ではない。16歳で相撲の世界に入り、18歳で幕下、しかしそこで足踏みをしてしまう。十両に上がるのに6年かかってしまった。まともな相撲だけに、なかなか上位では通用しなかった。12日目から4連敗で優勝争いからは消えていった。

 2敗が消えたことで、優勝の可能性のある力士がぐっと増えた。4敗勢までが含まれてしまった。4敗で優勝というのも、場所全体のレベルを象徴するようであまり歓迎できませんね。その中に豊昇龍、阿炎、御嶽海という曲者もいるから、今後の展開は読み切れない。

 13日目で優勝争いは7人にまでしぼられた。それでもこの時期に7人は多いけどね。3敗で新大関琴桜、そして新小結で石川県を背負って立つ大の里がトップ争いをする。これはおもしろい展開になってきた。

 14日目、琴桜が阿炎に敗けて4敗。大の里は湘南乃海をあっさりと退け3敗を守った。これで大の里の単独トップのなり、4敗で追うのが両大関と関脇の阿炎、前頭筆頭の大栄翔の4人となった。

 そして千秋楽じゃ。

 大栄翔は4敗を守り、その2番後に大の里と阿炎戦が組まれた。これは好取組だ。曲者阿炎に大の里、どう取る?

 ところがこれはあっさりと曲者を押し出して大の里が優勝を決めた。初土俵から1年、超スピード出世で小結まで上がり、そして優勝をした。すごい力士が現れたものだ。

 優勝の可能性としては豊昇龍、琴桜、阿炎、大栄翔もあったが、能登地震の被災者がまだ多くいる現状では、大の里が優勝することがもっとも良かったのではないでしょうか。

 大の里が二所ノ関部屋でよかった。師匠が稀勢の里でよかった。師匠と言っても盆暗も多く、そういう部屋に入ってしまえば素質を矯められてしまうということも往々としてありますからね。

 ぜひ、二所ノ関親方には大の里を大切に育てていただき、是非とも稀勢の里以来の横綱にしてくだされ!

 

 二所ノ関部屋名古屋場所の宿舎が愛知県安城市にあるんですわ。去年の7月場所の時に、近所をうろうろしていたら3人連れの浴衣姿のお相撲さんが歩道を歩いていたんですね。その頃はまだ大の里など知らないですし、二所ノ関部屋は幕下ばっかりでしたから、それほどチェックをしていませんでした。

 でもね、その3人のうち1人がとても大きかったことを記憶しています。今、大相撲の名鑑を見てみると、二所ノ関部屋に180㎝ごえの力士が8人いますが、あの時の1人はとても大きく190㎝をこえていたような気がするんです。とすると大の里だったのかなぁと思ったりもしています。

 通りすがりのオッサンは「がんばれ~」と声を掛けて、走り去ったのでありました。