クモの振舞い

 今朝のこと。奥の9畳の書庫に机が3つあって、その1つにパソコンが置いてある。その周辺を書斎と呼んでいるのだが、そこに入るには2つのルートが確保されている。一つは玄関わきの引き戸から6畳の書庫に入ってそこを通過するルート。もう一つはワシャの衣裳部屋と納戸(収蔵庫と呼んでいる)を抜けて9畳書庫の北から入る道。こっちは後付けの書棚2つに挟まれ、さらに箱詰めされた本が何段も積まれていてかなり狭い。今計ったら一番狭いところで幅が27㎝しかなかった。

 今朝は寝巻から着替えて、その27㎝の隙間から書庫に入った。そうするとね、何かが頭にくっついた。瞬間、クモの巣だと判った。髪を手ですくと、やっぱりクモの糸が手にからんだ。いくら何でも毎日入っている書庫である。クモの巣が張るほど不精をしちゃあいない。

 そこで思い出した。

 昨日のことである。やはり朝方、書庫に入って、少し空気を入れ替えようと思って、南のガラス窓を開けた。その時に網戸を引っかけて10㎝くらいの隙間ができた。そうしたらワシャの手のひらくらいある黒いクモが、窓の上部から侵入してきたのである。後で調べて解ったんだけど、コガネグモナガコガネグモだと思う。これね。

https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/docs/pages/rika/guide/insect/nagakoganegumo.html

 体長は20~25㎝というからほぼそれだろう。しかし、色目はもう少し黒かったような・・・。

 久し振りにでかいクモだったので、さしものワシャも少し驚いた。しかし、こんなのに侵入されたら、よく遊びに来る3歳の友だちがびっくりするといけないので、追い出しにかかった。しかし敵もさるもの、長い8本足を巧みにつかって逃げ回る。

 ワシャは芥川の愛読者なので、クモは基本的に駆除しない。カバキコマチグモ

https://www.pref.yamanashi.jp/documents/20848/kabakikomachigumo.pdf

以外は毒性を持たない益虫だからね。

 ワシャの書庫に侵入したのは大きさから言ってコガネグモだったろう。それを追い払おうと手元にあったハタキで追ったんだが、すぐに机と窓の間の隙間に入り込んでしまった。窓は立ちが2mあるんだけど、下半分は机と本で隠れてしまっている。本をどけて下半分の窓を確認したんだけど、その時にはクモの姿は見当たらなかった。おそらく窓の隙間から外へ出たと思っていた。

 夜のことである。録画しておいた「笑点」を見ながら晩酌をやっていると、テレビの上の壁を大きなコガネグモが這っていくではないか。朝のあいつだった。出ていっていなかったのだ。

 よおし、今度は見晴らしのいい居間である。ヤツにとって遮蔽になりそうなものは少ない。ワシャは手元にあった朝日新聞を丸めて、クモと対峙した。クモもワシャの動きをじっと見ている。ワシャはクモを興奮させないようにゆっくりと動きクモの右手の窓を静かに開けた。そうしてから、やはりゆっくりと動いてクモに近づき、朝日新聞でクモの背後の壁をトントンと突いた。

 クモはびっくりしてコソコソと動き回る。朝日新聞は窓以外のところには向かわないように進行方向を遮る。

 そうしているうちにクモは窓から出ていって、ワシャはさっさと窓を閉めたのであった。クモ追い出し作戦成功。こういう時には朝日新聞は役に立つ(笑)。

 

 視聴率がいいのか悪いのか、ワシャは勇壮なNHK大河が好きなので、どうもまったりした平安ものはいただけません。昨日の「光る君へ」も見ておりませぬ。それでも紫式部の『源氏物語』はやはり世界に誇る文学だと思っています。

 今日のお題も『源氏物語』から使わせてもらいました。第7帖「紅葉賀(もみじのが)」に出てくるフレーズです。

 光源氏がネーチャンの寝室にいて、誰かが近づいてくる気配を感じこう言いました。

「わづらはし。出でなんよ。蜘蛛の振る舞いは、しるかりつらんものを」

 この当時の俗信で「蜘蛛が人の衣につくと親しい人が来る」というものがあったので、訳すと、「めんどくせーなぁ、帰るわ。旦那が帰ってくることはわかってたじゃん」と言っている。もっと上品にですけど。

 ワシャんちのクモはウロウロしたけれど、ワシャの衣にはついていないので、親しい人が訪ねてくることはなさそうだ。