当選人冬の時代

 また出た。市長の強い言葉が録音され公開され糾弾される。

《「お前ナンセンスなんだよ」笠岡市長が職員にパワハラ? 市議会が音声データ公開 岡山》

https://news.ksb.co.jp/article/15076300

 笠岡市、4万3000人程度の小さな自治体である。そこの市長と執行部の間の会話。小さな集団の家長である市長は何年もその集団の中にいると誤解しちゃうんですわ。

「俺ってこいつらのリーダーで、かつ仲間だよな」って。

 それが違うんですわ。選挙で選ばれた当選人なんか、そもそも役人の仲間じゃないんですよ。裁可をするトップの機能としては認めてはいるが、小集団の中で部下たちに心を開いてもらうというのはかなり難しい。それは、首長と同じく当選人として議会を構成する議員にも言えることで、役人集団というものはなかなか心を開いてくれるものではないことだけは知っておこうね。

 優秀なる首長は、組織の中に心許せる仲間を求めない。むしろ組織ではないところに本音で話すことのできるメンバーをつくる。それが正解。

 さて、笠岡市長、この程度の会話は許されるのではないか。ただし、職員に向かって「おまえ」はダメだと前から言っている。「あなた」と言い換えるだけでずいぶん言葉が柔らかくなる。そのくらいは首長になる人は学習しようね。

 明治大学を卒業後、支那の大学に通ったり、米国大学にいったりとなにかと忙しい人物だが、あまり地頭は良くなさそうだ。お顔を拝しても切れ味がよさそうには見えない。地元の海苔屋のボンボンなのかな?

 とにかく権力を行使できるものは、極力、自制的でなければいけない。すべての会話が録音されているものと思った方がいいですぞ。

 

 ワシャのよく知っている議員が、ある委員会の副委員長をしているときの話だ。

 委員長とともに議員控室で午後1時から当局と打ち合わせをすることになった。担当課長と担当者は5分前に顔を出した。

「じゃあ」ということで、委員長、副委員長ともに席を替えて、後は担当部長の到着を待つだけとなった。

 午後1時10分になっても、担当部長は現れない。課長たちは「申し訳ありません」と冷や汗をかいている。でもね、その人たちが悪いわけではないので、委員長も副委員長も笑顔を絶やさず雑談をしている。

 午後1時13分、担当部長が平身低頭しながら急ぎ足で控室に入ってきた。その瞬間、噴火が起きた。

「テメエ!バカ野郎!何様だと思っていやあがる!」

 副委員長の罵声が議会フロアじゅうに響いた。廊下を挟んだ別の部屋から、「何事か?」と心配した同僚議員が覗きに来たくらいだ。それも「オマエ」ですらなく「テメエ」であった。録音されていたらヤバかったかもね(笑)。

 でもね、その部長、遅刻の常習犯で、定刻通りに会議に来たことがないという胡散臭い野郎なんですわ。

 それが立て続けに3回続いたんで、「仏の顔も三度まで」と言うでしょ。だから普段は温厚な(笑)副委員長も噴火したということなんですね。

「委員長も、オレも暇じゃねえんだぞ!」

 と、言うと、遅刻部長はこう言い訳をした。

「打ち合わせが延びまして~」

「誰とだ?市長か?副市長か?」

 実はこの副委員長、元職員で、その部長の上司だった人でした。この人は嘘が大嫌いで、嘘がばれれば連山みな大噴火状態になることを、遅刻部長も知ってはいました。

「担当者とです」

 これは正直に言っている。だから、「そんなものが委員長を待たせる理由になるか!二度と遅刻は許さんぞ!」程度の小規模噴火で納まったようでゲス。

 

 このエピソードで何を言いたいかというと、全国のあちこちで録音データが公開され、首長や議員が追い込まれているけれど、その全ての責が当選人たちにあるわけではないということを言いたい。

 優秀な職員もいる。しかし、前述の遅刻常習者のようなのもいる。最近、遅刻がなくなっているなら、それは副委員長のお灸が効いたんですね(笑)。

 明石市の前市長の事例もある。あれなんか、無能な職員とマスコミに完全にはめられた。そういったこともあるので、首長にも議員にも役人にもある一定数のバカはいるといいうことを念頭に置いて、この手のニュースには臨もうと思っている。