ごんぎつねの夢

 昨日、駅前の書店に、本岡類『ごんぎつねの夢』(新潮文庫)が届いた。早速、受け取りにいって、すぐに読んだ。

 本のことに触れる前に経緯を説明しておく。今月1日の朝日新聞の記事下広告に新潮文庫の5月の新刊案内があった。その中に新美南吉『ごんぎつね でんでんむしのかなしみ』と並んで、本岡氏のミステリーが紹介されていた。著者名とタイトルの横に小さな字でこうある。

《「犯人」は原稿の中にいた!クラス会での発砲事件、消えた同級生。感動の傑作ミステリー》

 でもね、けっこう本を読んでいるワシャはこんなキャッチには引っ掛かりませんぞ(笑)。

 新美南吉関連のちょっとした件で、この本を引用する可能性もあった。だったら取り合えず目を通しておこうと思い立ち、新聞広告を見たその日の午後に駅前の書店に顔を出した。

『ごんぎつね でんでんむしのかなしみ』のほうは棚にあったが、『ごんぎつねの夢』はなかった。1冊あったが売れてしまったとのことで、さすが南吉ゆかりの書店である。

 店員さんは「注文しておきましょうか?」と言ってくれたが、いつも「e‐hon」の書店受取で頼んでいるので「今回もそうしておきます」と答えて帰宅。自宅のパソコンからネット注文をしておいた。

 結果、連休だったこともあって、普通なら2日くらいで届くのだが、1週間ほどかかってしまった。

 ネタバレは詰まらないので物語については触れない。でもね、とてもおもしろいミステリーでした。とくに「ごんぎつね」が物語の主軸にあるので、新美南吉は全編にわたり通奏低音として流れているし、鈴木三重吉、巽聖歌などが随所に顔を出す。ううむ、南吉ファンには堪えられない一冊だ。

 一言だけ。

 この作品、南吉の孤独、人生の孤独をみごとに描いている作品である。

 そして「ごんぎつね」は6章で終わっているが、この本には6章の次の第7章がある。これがまたいい。