12年やってできなかったことは何年やってもできません

 今朝の朝日新聞地方版。「公約違反?国政?市長との応酬熱く 小牧市議会定例会」という見出しが躍った。

 ちょっと前にもこんなニュースがあった。

《「3期まで」と掲げたのに4選へ マニフェスト大賞の愛知県小牧市長》

https://www.asahi.com/articles/ASQCC5KKKQCBOIPE002.html

 要は、「市長は3期12年まで!」とした自身の選挙公約を保護にして続投がしたいと言い出したわけやね。まぁこれって首長の座についてみると、その権限たるや絶大なものがあり、例えば小牧で言うと一般会計予算が600億くらいか。それを62平方キロ程度の小さな町で使う裁量を与えられる。少なくとも市内に納まっている限り、どこへ行っても「市長!」「市長さん!」と立てられ持ち上げられる。これに凡人はやられてしまう。こんなことを3期12年も続けれてごらんなさいよ、豚もおだてりゃ木に登るてなもんですわ。

 間違いなく3期12年を公約に掲げた市長も、最初は3期で辞めようと思っていた。しかし、あまりの居心地良さに「もう1期」ということになった。

 過去に市長が職員に対して行った「威圧的な言動」を糾弾決議されている。たかが47歳の市長じゃないか。明石市の泉市長じゃないんだから、もっと職員に対して謙虚になれ。怒鳴るわ、公約はやぶるわじゃぁ馬の脚が見えてるぜ。

 三河部でも多選批判にさらされた首長がいた。立候補時は3期で退くと言っていたのだが、4期目の選挙の時に「そんなことボクチン言ってないもんね」と言い出した。「まわりの人間が言っていただけ」とすっとぼけて、4選出馬で当選。これで禊は済んだということで、5選目もゆうゆう当選、次の6選目に突入しようとしたところで、政局が動いた。5選市長を推していた保守系議員が崩されて、反市長派で固まった。

 仄聞するところに依れば、どうも切り崩し工作の準備は4年前くらいから始まっていたようですよ(ニヤリ)。アンチ現職を明確に主張する人が、居酒屋の個室や、喫茶店の片隅で、市長派を一人一人口説いていって、反市長派を築いていったとか、いなかったとか。

 結果として、5期を務めた市長は引退を表明することになった。最初は「人材がいなければ続投もありうる」なんて未練たらしいことを言っていたんだけど、申しわけないが、小さな自治体の首長なんて「御輿」なのだ。軽ければ軽いにこしたことはない。

 人前で定型的なことを間違えずに言えること、うぬぼれが強いこと、鈍感であること、シャイでないこと、そして最低限の正直さと清潔さを持っていること、これくらいあれば、誰でもできる。

 もちろんそうじゃない優秀な首長も知っているが、上記のような資質で首長におさまっている凡人も多いということ。

 だから前述の5期市長が言い訳で使った「人材」はあまた存在するのである。結果、自分が続投したいだけの首長は、後継者を育ててこなかったということに尽きる。反市長派から「人材」を提示されて、しぶしぶ了解した。

 花道を格好よく退場する。これが千両役者の目指すところである。

「グズグズと花道をうろついているんじゃねぇ!」

 歴代の團十郎は怒っているに違いない。

 小牧市長もこれを他山の石として格好良く己の始末しなさいよ。