多選自粛条例

《「多選自粛は自信のなさ、愚の骨頂」4期目市長》
https://www.yomiuri.co.jp/election/local/20190107-OYT1T50100.html?from=yartcl_outbrain1
 神奈川県海老名市の市長が、隣接市の条例に「愚の骨頂だ」と言ったんだとさ。記事を引いておく。
《神奈川県海老名市の内野優市長は7日の年頭記者会見で、首長任期を「連続3期を超えないように努める」と規定した厚木、大和両市の多選自粛条例について、「愚の骨頂だ。(首長は)気力と体力があれば何期でもやればいい」と痛烈に批判した。》
 海老名市長、自身が多選に踏み込んでいるので、自己弁護のために他市の条例に噛みついている。いいじゃないか、3期だろうと4期だろうと、それぞれの自治体で考えれば。厚木は厚木、大和は大和で考えればいいことで、それに対して、権力にしがみつきたいだけの隣接の市長が文句を言う筋合いではない。
 多選批判をして当選し、当選後に「多選自粛条例」を制定する、潔いではないか。それでも4期目に出てしまう厚木市長の面の皮の厚ぎことといったらありゃしないねぇ。政治家というのは二枚舌も、顔も二面、三面に使い分けるから嫌いだ。最近、それがよく解ってきた(笑)。
 残った大和市長がどういう決断をするのか判らないけれど、センスのいい図書館を最近造ったことでもあるし、格好いい進退を決めるのではないか。
 そうそう、図書館といえば、多選大好きな海老名市長のおひざ元にも、ある意味で有名な図書館がある。「海老名市立図書館」だ。どう有名かというと、あの九州武雄のツタヤ図書館と同様のCCCが運営する数少ない図書館なんですね。愛知県小牧市では、あまりに運営管理が杜撰なことがわかって、CCCの導入を中止したくらいだ。
 その悪名高きCCC運営の海老名の図書館を、ワシャも、どんなものかと見に行ったことがあるが、とても驚いた。無残な図書館でしたぞ。高い位置の棚にまで書籍がびっしりと詰まっている。取るのに梯子を使わなければならない。しかし大丈夫だった。高いところにある書籍はみんな見せ掛けだけのパネルだった。張りぼての蔵書だった。「これなら地震がいつきても安心だ。知識より安全を優先しているんだな」と感心した(笑)。
 とにかく図書館の一等地(入り口を入ってすぐのエントランス)には新刊のツタヤ書店の本がぎっしりと並んでいる。借りれる本はどこだろうと探してみると、奥の一角に図書館機能がこっそりとあった。おいおいワシャの町なら公民館程度のその本のラインナップを見て、驚きましたぞ。武雄でも問題になっていたが、なにしろ古い本が多い。ブックオフでもこんな本は置いていないぞという古くて役に立たない本が並んでいる。ツタヤ図書館は見てくれはいいのだけれど、図書館蔵書の内容はスカスカで、まさに羊頭狗肉を地でいっている印象を受けた。
 海老名市の行政についてはなにも知らないが、海老名市長の好きな権力は、海老名でもどこでも滞ると腐りが早い。今、海老名市長は4期目だそうだが、以前に豊臣秀吉のことをこの日記で書いたことがあるけれど、16年もあれば、権力は確実に腐るのである。経済状況さえ良ければ、権力が長期にわたっても、市民に波及するような問題はなにも起らない。一見、安定しているようには見えるのだが、権力構造としては、土台の下で腐敗が始まりシロアリもわいている。実際にCCC導入時の首長は現市長だよね。
 そういう意味では、「多選自粛条例」を策定した厚木や大和はとても賢明な判断をしたと言える。3期12年もあれば、やる気のある首長なら充分に自分のやりたいことを実施できる年限である。12年もかかってレールしか引けないのは「自分は無能だ」と言っているのに等しい。
 そういう意味では、大和市長には美しい引き際を見せていただきたいと思っている。これで、もし大和市長が4選出馬をするようなら、それはそれで面白いけどね。

 多選批判をして前任者を排除しても、自分が権力を握れば、多選批判などなかったことにして、権力を維持することだけに、血道を上げるようになる。古今東西スターリンから毛沢東、果ては小さな村の村長まで、権力に魅入られた政治家が、晩節を汚した例は枚挙にいとまがない。得てして権力者は権力に恋々とする。そういうものなのである。
 颯爽と登場して、やることをさっさと済ませ、仕事が終わればさっさと退場する。これがまことに格好いい。このタイプの政治家は後々までの評価が高くなる。
 これが3期を超えると権力者には判らなくなってしまう。だから、厚木も大和も「多選自粛条例」なるものをこしらえたのである。大和市長の美学に期待したい。