侍は誓いを捨てる時に腹を切る

 朝日新聞の今朝のこのニュースは社会面だから、おそらく全国にこのニュースが行き渡ったのだろう。

マニフェスト大賞の市長、マニフェストに反し4選》

https://www.asahi.com/articles/ASQCC5KKKQCBOIPE002.html

 要は、「多選批判」して現職を破った新首長が、テメエもその職に長くあると、いろいろなうま味が出てきて長期にやりたくなるということで、これはさほど珍しい事例ではない。

 同じ愛知県内のどこぞの自治体でも「多選批判」で当選したものの、自分が批判した前の市長を超す期数になる時には、「僕は多選批判をしていない。あれは周囲の支援者が言ったもの」と言い張って多選を進めている厚顔無恥なのもいる。本人の口から「多選批判」を聴いた人間が多数いるにも関わらず(笑)。

 その点、山下小牧市長は甘かったね。口で言った話なら「言った、言わない」で平行線なんだけど、文字にして、それも流行にのってマニフェスト大賞なんかに応募するもんだから、証拠が残っちまう。さらにそれを高く評価されっちゃた日には、もう言い逃れはできません。

 記事に依れば《山下市長は2011年、「任期は3期12年」をマニフェストに掲げ、5選をめざした現職の多選を批判して初当選。当選後は議会で否決されたものの、多選自粛条例案まで提出していた。》という念の入れよう。それが4期目出馬を口にしちゃあいけませんぜ。政治家の矜持はどこに捨ててきたのかニャ?

 だいたいにおいて凡庸な人物は長期にやりたがる。そもそも地方自治というものは10年もあれば大方の施策は実現できる。総合計画という市の指針自体が8年から10年でできているでしょ。それが12年かかってもできないというのは、己の無能さを暴露しているようなものだわさ。

 さらに3期、4期と続けてくると、市民に対して顔が売れてくるし、かといって一般市民は市長の仕事なんてよく分からないから、スキャンダルがなく、酒癖もほどほどで、平々凡々な施策を実行し、大きなマイナスさえなければ、絶対に現職有利だ。若いにこしたことはないが、それでも70にいっていなければ大丈夫。時たま、70を超えてとち狂ったのが出てしまうと現職でも敗北を喫することがあるけどね。

 さらにマヌケな議員が、長期市長を重宝するのである。スキャンダルはない、そして平々凡々、取りあえず議員の要求するドブの整備とか、道路の穴埋めなどは律義にやってくれる。そのほうが支援者にはいい顔ができるので、「まあ長期でもいいか」ということになる。

 しかし、長い目で見るとしっかりとした長期ビジョンを持たない首長は必ずその自治体の足を引っ張ることになる。

 あるモノのいい首長がこう言った。

「僕はね、僕以外の市長の創るこの市の姿も見てみたいんだ」

 だらだらと牛の小便のように続けることが必ずしもいいとは限らない。とくに「多選批判」をして当選したのなら、そこは潔く後進に道を譲ってこそ、格好いい市長ということになりやしませんかね。

 花道を飾ってこその千両役者。引っ込むときこそ格好つけなくてどうする、小牧市長。