90歳、10期の弊害

 今朝の朝日新聞社会面。朝日のネットニュースはけち臭いのでこっちで。

《全国“最高齢首長”89歳町長が10期目へ出馬表明 健康・多選の懸念も「全く心配ない」【出雲崎町】》

https://news.yahoo.co.jp/articles/4ecad58dfe7b9245d7296b2c6a02efdfb5fce27c

 ワシャは人の人相を見る。観相学ということではないんですが、人の顔というものは正直なもので、その人の来し方がしっかりとプリントされているんですね。目配り、目の色、目のおよぎ方、表情の動き、顔の造作、感情による皺の出方、話し方、話しているときの口の形などなど、人の顔を観察するのはとても面白い。

 その点で言えば、90歳になる新潟県出雲崎町長の顔はよく出来ている。どこぞの女子職員に暴力をふるったボケ議長とは顔の組成自体が違う。出雲崎町長が、町民から支持される意味が顔立ちからも伺える。

 それはそれとして。顔の人生組成がよかろうとも、さすがに90歳の立候補はいかがなものか?この町長にどれほどの知見があろうとも、残念ながら90歳には、あまりにも残り時間が少ないと言わざるをえない。

 地方自治、まちづくりというものが、5年程度で完結できるものはない。区画整理、都市改造などで短くて30年、ワシャの地元では幹線道路を800m整備するに、40年かかってもまったく手つかずになっている。

 ことほど左様にまちづくりというものには時間が必要で、町の将来を30年スパンで考えたとき、さすがに90歳のご老人では、その範囲まで想像することは困難である。どう見積もっても10年が限度で、その先の自分のいない世界のことを創造するって、神様じゃないんだから(笑)。

 お顔を拝見するに、町長は君子だと思う。しかしどれほどの君子であろうとも物理的に無理だということは自覚しなければならない。

 出雲崎町には4000人の住民がいる。それでも現町長に替わって町政をまとめ上げていく人材がいないのだろうか。現町長に比較して、知見、力量において見劣りがするにしても、90歳の前町長が支援に回って、手取り足取り指導をすればいいだけのこと。それが行政の継続性となり、後継者育成へとつながっていく。

 一例を挙げておく。

 とある自治体の話である。長期(といっても5期20年)に務めた首長がいた。多選批判をして3期目の市長と戦って下してトップの座についた。しかし、ガキの頃から一貫性のない男で、「3期で辞めろなんて言っていないし」と手のひらを返して、4期目、5期目と行政に君臨した結果、組織が変容してしまった。活気のあった某市は、目立たない詰まらない自治体へと変貌していったのである。

 ところがね、その一貫性のない首長が、トップの座から転げ落ちた。20年ぶりに市長が交替したのである。そうするとね、組織の風通しがよくなって、自由度が増し、組織のあちこちで閉塞していた職員が息を吹き返したのである。これがあと4年遅れたら、お追従職員ばかりが増殖し、市民を見るのではなく、上ばかり見て仕事をするバカばかりになっていただろう。善かった。

 これを起こさないといけない。町長が1期目の時に入ってきた新入職員はみんな退職している。君臨するのはただ一人、それでいいのだろうか。

 どんな君子、どんな善政でも時を重ねれば必ず腐る。パクストクガワーナ260年もそうだったように、水の流れも淀めば悪臭を放ち始める。町の幹部、町議会議員、町の有力者たちの「あの人に任せておけば大丈夫だ」という他力本願な考え方も、おそらくこの40年で出来上がったものなんだろう。

 地方自治、トップの力量の及ぼすところはごくわずかだ。淀まず、濁らず、腐らず、行政をつねに活性化していくことこそが、格好いい「まち」を造っていく秘訣だと思うがいかがかな?