引き際。今から出てくるんかい!

 今朝の新聞の三河版に、愛知県知立市の市議選当選者の結果が出ている。定数20に対して届け出者が20人、つまり無投票で市議選は終わった。そのことはとりあえずどうでもいい。候補者各位におかれては、選挙戦がなくてホッとしていることだろう。なにしろ選挙というものは、えらく大変なもので、あの地獄を経験せずに議員になれるというのは運がいい。

 それはそれとして、問題点もある。今回の20人の当選者の内、70歳以上が7人もいることだ。これはちょっと多すぎる。例えば隣接の安城市では70歳以上の議員は26人中1人であって、その人も次は引退をすると表明している。

 知立に話を戻すと、7人の70代の内、新人議員が5人いることに驚く。共産党の新人は77歳で今任期中に80を超えてしまう。その他の新人はそろって保守系で70、71,72,73歳と見事に並べてきた(トホホ)。

 新しい議会が発足した時点で、後期高齢者が2人いて、1期生の中から任期中に3人が後期高齢者になってしまう。

 知立の市長はまだ還暦を過ぎたばかりの若い人で、それこそ42.195キロを平然と走ってしまうようなパワフルな人と聞いている。それに対する議会がジイサンばっかりでいいのでしょうか?

「まちづくり」というものは、新たな息吹をその地域に吹き込み、住民も外からも訪れる人も「いい街だ」と思われることが重要だ。それも今から一番お金を使ってくれる子育て世代をどう誘導するかが喫緊の課題と言ってもいい。つまり若い人の柔軟な考え方、老人でもいいが、柔らかい頭を常に鍛えていて、新しいことには真っ先に飛びつくような瑞々しい好奇心を持っている、そんな人でなければ「まちづくり」の未来なんか語れない。

 知立市喜寿を超えた議員さんたちが、皆さん、若い柔軟な頭で、フルマラソンを走るトップに負けないようなフットワークで、知立市の未来をしっかりと考えていってくれればいいけれど、残念ながらそんな喜寿超えのジジイは見たことがない。

 

 いい例を挙げよう。

 土曜日に評論家の呉智英さんの講演会に言ってきたことは日記で触れた。とても良質でクオリティーの高い講演会だった。呉さんの取り巻き(ワシャも含めてね)は、呉さんに何度も勉強会や塾のようなものを開催して欲しいと懇願してきたが、なかなか応諾してもらえず、何度もお願いして、久しぶりの会が土曜日に開催された。

 相変わらず呉さんの舌鋒は鋭く、現状分析や過去の古典籍をベースとした講義には感心させられっぱなしで、3時間はあっという間に過ぎてしまった。

 最後の質問のところで、塾生から「今後も定期的にこのような会を開いていただけないでしょうか」という懇願が出たんだけど、呉さんは優しく微笑みながらこう言われた。

「70を超えてから記憶力がめっきり落ちてきてね。週刊誌などの連載も1年前に全部辞めさせてもらった。自分ではそんなことはないと思っていたんだけど、老化は確実にくるね」

 呉さんは立花隆と匹敵する知の巨人である。漫画家の小林よしのりさんは、立花隆以上だと言い切っている。現在、呉智英とがっぷり四つになって論戦のできる知識人が、はたして何人いるだろう?

 そんな呉さんをして、「老化には勝てない」と言わしめたのである。知の筋肉量でいえば日本でもトップアスリートと言っていい人がそう自覚している。いわんや凡人をおいてをや。

 

 問題点を列挙しよう。

〇高齢者は、こと地方自治には出しゃばらないほうがいい。

〇切磋琢磨して若手を育てよ。

〇無投票の場合、「思い出立候補」の人も紛れ込んで来るので、そのあたりに注意せよ。

議員定数を減らせ。

〇議員報酬を減らせ。

〇加齢臭を議場に振り撒くな。

 

 呉智英さんのような見事な引き際が格好いい。