渋沢翁から李先生

 昨日、読書会。課題図書は、渋沢栄一論語と算盤』(ちくま新書)。メンバーの評価は一様に高かった。なにしろ書かれてから百年以上経過しているのにも関わらず、まったく色褪せていないのだから。

 例えば、国際情勢を論じているところがあるのだが、それがまったく現在の米中関係や東アジア情勢を指摘しているようで、渋沢翁の先見性や畏るべし。

 また明治末年頃の精神教育について嘆いているところがある。

《徳川三百年の間を太平ならしめた武力による政治も、弊害を及ぼしたことは明らかであるが、この時代に教育された武士のなかには、レベルが高く視野の広い気質や行いの持ち主もまた、少なくなかった。ところが今日の人にはそれがない。富が重なっても、悲しいかな武士道とか、あるいは社会の基本的な道徳というものが、なくなっているといってもよいと思う。つまり、精神教育がまったく衰えていると思うのである。》

 渋沢翁が講演などでこう言われた時期から世界は戦争の時代に突入する。その頃に、翁が嘆いた教育を受けて育った世代が李登輝先生や司馬遼太郎さんであった。

 彼らが武士道に適った強い精神力を持った人物であることは論を俟たない。その李登輝さんが『「武士道」解題』(小学館)で、現在の日本の精神教育を嘆いておられる。渋沢翁が嘆き、その嘆かれた社会の中で辛うじて武士道を全うした李登輝さんが、さらに嘆く社会とは、どれほど地に落ちた時代なのであろうか。

 

 今日は早朝からスケジュールが詰まっている。またこの続きは明日にでも書きたい。行ってきま~す。