先生にご挨拶

 昨日、お年始に評論家の呉智英邸を訪なう。先生のお宅は名古屋の閑静な住宅地の中にあり、近年新築をされている。そこに呉塾の高弟の皆様から、ワシャのような不肖の弟子までが集っての新年会が開催された。どちらかというとアルコール有りの講義のようなかたちで、この春の統一地方選の話から始まって、先生の身辺についてのことや、最近の出版不況の話、売れない作家の噂、「週刊ポスト」休載の件、ジャーナリズム論、林香里について、時計の話、国産とノルウェー産のサバの見分け方(笑)など多岐にわたった。気がつけば、5時間ほどが、あっという間に過ぎていた。
 ワシャ的には、いろいろと暗中模索していることもあって悩んでいたのだが、呉先生を始めとして、聡明な仲間に励まされ、元気を取り戻したのだった。
 午後7時ごろに辞して、仲間とともに千種に出て、そこで二次会となった。手羽先の美味しいお店で、そこでさらにアルコールを補充して、充実した一日を終えたのだった。

 二次会で話題になったことがある。歌舞伎公演の際に、例えば「平成中村座」のように小屋掛けをするものに多いのだけれど、定式幕の内側、舞台の両端に客席をこしらえて、そこに客を入れるという見せ方をすることがある。舞台の役者と同じ板の上で見るので、見る方もなかなか緊張を強いられる。通常の客席から見上げる客も最初は違和感がある。その席の名前が出てこなかった。
 ネットで調べたのだけれど要領を得ず、自宅にもどって「平成中村座」のパンフレットを出してきてようやく思い出した。「桜席」だった。あるいは「うずら席」とも言うらしい。

 帰路、千種から金山に出た。10時近い電車だったが、運よく座ることができた。サラリーマンのオジサンの隣りに座ったのだが、現職ということはワシャよりも若い人であろう。しかし、この人が大そう疲れていた。病気でもなさそうなのだが、頭を抱えて強張った表情を見せている。スーツにネクタイを締めているから、今日が仕事始めなのだろうが、頭髪もボサボサで、飲んだ帰りかとも思ったが、ワシャのほうが酒臭いくらいだ。
 まあいろいろあるんだろうな。会社勤め宮仕えは大変だから。