昨日の夕方の地方局のニュースで、愛知選挙区で落選した末永友香梨氏(N国)の選挙戦の特集をやっていた。ご主人との二人三脚で乳飲み子を抱えての選挙戦なのだが、それでも傍には楽しそうにやっているのが伝わってくる。地獄とは言わないけれど、屈辱の選挙戦を泡沫候補と揶揄されていた末永候補がどのように戦ったのか、分析をしてみた。
まず供託金である。参議院議員は300万円。これは大きい。普通の主婦が参議院選に出るにはかなり高いハードルだ。地元の名士・素封家、歴代政治家として蓄財をしてきた一族、会社のトップ、党による鉄壁の支援などがあって初めてスタートラインに立てる。それを末永候補は「NHKから国民を守る党」というこれまた泡沫党と思われていたところから出馬し、もちろんそんな党に党費などないから、自前で300万円を調達し供託したのである。そして事務所も持たず、支援者と言っても夫が一人だけといったような有様で、立候補届にしても、自身が0歳の長男をベビーカーに乗せて県庁を訪なって手続きをした。もちろん自民、国民民主、立憲民主、公明、維新、共産、社民のどの候補もそんなところに顔を出さない。雑事は支援者が代行してやってくれる。もちろんポスター貼りも夫婦がベビーカーを押して回っていた。だから投票日前日にも、まだポスターは貼りきれず愛知県内のどこかを歩いていた。もちろんそんな状況だから、ワシャの町のポスター掲示場でも「N国」のポスターはなかなか見つけられない。
少なくとも前述した政党に支援されている候補者たちは公示日当日に、あっという間に貼付が終了していた。公明党のポスターなどポスター掲示場の貼付番号が決まったとたんに、学会員の手によって瞬時に貼られていたものである。
そして各候補者とも選挙事務所での出陣式などを経て街宣活動をにぎにぎしく開始した。その頃、末永候補は県庁で手続きの最中で、おそらく要領も分からなかったから、届出順も末尾になったに違いない。街宣車も使わずに、選挙活動はおもにユーチューブによるものばかりである。一度どこかの自転車駐輪場のところで街宣をしたようだが、投票日当日も自宅でテレビを見ていた。そして落選した。
今回の投票で、比例区のほうは簡単だった。入れる候補者が決まっていたからね。でも選挙区の方は、自民党の酒井候補も国民民主の大塚候補も絶対安全圏にいるから、投票の意欲すら湧かない。安全パイに賭けるなんざ漢のすることじゃないと思っているからね。では、誰にするか。共産党には死んでも入れない。共産党亜流の立憲民主にしてもそうだ。それに田島候補の顔が鼻につく。維新の岬候補も、わきに写っている河村みゃーみゃーさんが最悪だ。もちろん創価学会に投票することは断じてありえない。社民?そんな政党がまだ生き残っていたの??ご苦労様。
こんな状況だから、ワシャはホントに「N国」に票を投じようと考えた。そもそもNHKは親方日の丸の経営体にも関わらず、きわめて左傾化した報道機関で、「お前らはどこの国営放送か?」と言いたくなる。それに「N国」の代表の立花氏の発言を何度かネット上で聴いたことがあるが、わりとまともなことを言っていたしね。まぁ、誰に入れたかは秘密にしておきます(笑)。
その「N国」の末永氏が8万5000票をとった。酒井氏の73万票と比べれば小さな数字でしかないが、それでも9分の1程度の票は確保しているわけだ。自民党が自民系の県議会議員、市議会議員を動員し(笑)、ポスターを掲示させ、チラシのシールを貼り、保守系の首長を集めて、出陣式、演説会、街頭演説、桃太郎と全県下を独楽鼠のように走り回って73万票。もちろん国民民主の大塚候補は50万しかとれなかったし、公明党の安江候補は、自民党県議団、市議団にまで動員をかけて、ポスターも選挙1年前から学会員の塀に掛かっていたにも関わらず、目立った動きはなにもしていない末永候補の5倍程度の票しか集められなかった。共産党の候補もそうだった。かなり早い時期から町のいたるところに女性候補者の写真付きのポスターが添付されていた。だからすぐに「ここは共産党員の家だな」と判るほどである。それでも末永候補の2倍ちょっとの票しか集めていない。
既成政党の候補者は、選挙のための準備に巨額な費用と、人を使ってきている。それは、全国に展開すれば莫大な金額となるだろう。そうまでしなければ選挙の当選が危うい。しかし、1票あたりのコストを考えれば、印刷製本費、会場使用料、燃料費、そして協力者たちの労力、これを換算すれば、えらい金額になりますぞ。もちろんボランティアが原則だから人件費などは基本的に発生はしないが、例えば某議員の出陣式に首長、議員などが400人ほど参集する。車で選挙事務所までやってきて、そこから長々と下手な演説を聴かされる。2時間拘束としても、400人が1000円の時給として40万円、それに足代など加えれば50万円が消えていく。あくまで少なく見積もってですよ。
某議員に限らず既成政党候補者は県内各所で類似の出陣式・演説会などを行っている。例えば1人4カ所でやったとして(そんなに少ないわけがないが)200万円の時間や燃料が費やされる。これが全国ですぜ。選挙区で少なくとも170くらいは既成政党だから、旧態依然とした選挙戦をやっている。これだけで3億円以上のムダ金が消える。これに実戦に投入される実質の資金を加えたら、どれほど莫大な金が費やされていることだろう。
ところが「N国」の末永候補はまったく無駄金を使っていない。無駄なことをしていないのである。結果として自身は落選し、供託金は4000票の不足で没収されてしまったが、それでも党代表の立花孝志氏を国政に送り込むことには成功した。そもそもそこを狙って各候補者が動いていたから、目標は達成したと言っていい。
今日の朝日新聞社会面に《N国比例票男性が68%》という記事があった。内容はともかくとして泡沫と言われた「NHKから国民を守る党」が全国紙で、その動向を報じられるまでになっている。これも、各選挙区でがんばった末永候補のような人たちの下支えがあってのことであろう。
ワシャは、ちょいと選挙には詳しい(笑)。効果という点では「N国」は圧勝だった。あるいは障害者を前面に押し立てる「れいわ」のやり方も斬新だった。是非はともかく、旧態依然とした既成政党の昭和なやり方はじつに古く思えた選挙戦だった。すでに社民党、共産党には退潮の兆しが見えている。今後は、物量ではなくアイディア勝負の選挙戦が増えてくる、そんな気がした。