寂しい金持ち

 絵画の鑑賞が好きだ。だから時おり美術館に足を運ぶ。でも、このところ行っていない。ワシャ的には「オフィーリア」を描いたミレイや、「ロダン」、「ミュシャ」、「ラトゥール」など写実的な絵が好ましい。苦手なのは「ゴッホ」で、かなり以前にゴッホの展覧会に行って、絵の強さに中ってしまったことがあったくらいなんですよ。だから、強烈すぎる絵画からはちょっと足が遠のいている。
 それでも、そんな絵が好きな人もいる。大昭和製紙の会長だった齊藤了英はそんなゴッホの絵を好んだ。「医師ガシェの肖像」を125億円で落札し、自宅の和室の床の間に掛けて鑑賞したそうな。「日本間で見るルノワールゴッホはいいよ。死んだら棺桶に入れてもらうつもりだ」と発言し物議を醸す。結局、ゴッホは金満ジジイの棺桶には入らず、今もこの世に存在しているようである。よかった。

 なんでこんなことを書いているかというと、夕べ、テレビのニュースでこの事件を取り上げていた。
《和歌山の資産家変死》
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180603-00000037-asahi-soci
 たまたま、その変死した資産家の自宅内を家政婦がテレビ局に公開していた。その室内のあちこちに高そうな絵画が無造作に掛けられているのを見て、大昭和製紙のアホ会長を思い出したというわけ。
 この変死した資産家も1億円を「紙くずだ」と断言していた。ものの価値の解らない金持ちは多いね。でも資産家の言うことも一理あるとも思う。いくらタンスの中に札束をゴロゴロ持っていたって、覚せい剤を盛られて殺されていては、いくら金があっても使えないわけで、そういった意味から言えば、彼にとってしてみれば紙くずと大差はないのだろう。

 今日は、「天安門の大虐殺」があった日だった。金満ジジイのことなんか書いている場合ではなかった。だから朝日新聞の1面下の書籍欄に『劉暁波伝』(集広舎)の宣伝が載っていたんだね。隣国の自由の死にも思いを馳せようっと。