豊国とカラヴァッジョ

 このところ「本買いモード」に入っていて、ここ2カ月で122冊を棚に追加した。月60冊のペースは、もちろん作家の日垣隆さんクラスの読書家からすれば大したことはないけれど、それでもワシャ的にはかなりハードなペースと言っていい。

 その中に8冊の美術書が含まれている。やっぱりワシャは芸術が好きなんですね。昨日、岡崎で買ったのが『武者絵でたどる木曽街道』(中山道広重美術館)である。ワシャは浮世絵を世界に冠たる絵画だと確信している。だから北斎、広重、歌麿国芳など名だたる浮世絵師の作品集は何冊か持っているのじゃ。ただ国芳の「木曽街道六十九次之内」は蔵書になかったので、ちょっと高かったけれど買い求めましたぞ。

 これが面白かった。普通の街道ものと言えば、広重の「東海道五十三次」や北斎の「富岳三十六景」のように風景が画題となる。ところが国芳の「木曽街道」は風景が画面の左肩10分の1くらいのところに収められて、あとの10分の9は武者絵(人物)を描くことに費やされている。

 例えば、この間仕事で訪問した埼玉県深谷市は、もちろん深谷宿です。そこには強弓を引く百合若大臣(ゆりわかだいじん/近松門左衛門浄瑠璃の主人公)が描かれているのだが、おやぁ百合若大臣と深谷ってなにか縁があったかいなぁ?

 ないんですね。ではなんで深谷宿に百合若大臣かというと、百合若大臣は大弓をつねに所持して、その大力をもって強弓を引き絞り、矢を深いところまで放ったんですね。深いところまで矢を放った・・・深い矢を放っ・・・深い矢・・・深谷!ということで、洒落なんですね。

 深谷から十一宿先の信州追分の絵は「四谷怪談」のお岩さんと宅悦が描かれている。いわゆる「髪梳き」の場で、ワシャ的にもいっちゃん恐いところでヤンス。毒を盛られたお岩さんが、髪を梳くと、その髪がバサリバサリと血の塊とともに抜けていくんですね。ギャーッ!

 なんでそんな凄惨な絵かというと、「お岩」が「毛」を持って立ちすくんでいるので「おいわ」「け」、「おいわけ」って駄洒落じゃん。血の凍るような場面を駄洒落で笑い飛ばしている。国芳、畏るべし。

 なにしろ他の宿場も駄洒落やら、おふざけが満載で観ていて飽きない一冊となった。

 

 もう一冊、数日前に買ったのが『カラヴァッジョ 光と影の巨匠』(朝日新聞社)である。なんといっても昨日から名古屋市美術館で「カラヴァッジョ展」が始まった。

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/caravaggio

 美術仲間とまた出かけたいと思っているのだが、その前に予習をしておかなければということで買い求めたのじゃ。

 上記の美術館のサイトの初っ端に出てくるポスターになった作品「ゴリアテの首を持つダヴィデ」、これも凄惨な絵ですな。製作年次はワシャの買ってきた本では特定できなかったが、カラヴァッジョが関ヶ原の合戦前後に活動した絵師なので、その頃のものですな。そしてその頃は絵と言えば宗教画という時代ですから、当然、カラヴァッジョも宗教を題に取って描いている。「ゴリアテ」というのは「天空の城ラピュタ」に出てくる母艦の名前ではないんですよ。旧約聖書に登場するペリシテ人戦士のことなんですね。もちろん宮崎駿も聖書から採っている。

「カラヴァッジョ展」を視野に入れると、また聖書を勉強することになる切っ掛けになるので楽しみだ。

 

 今日から読書週間。実は、ここまで書いてきて気がついた。本の話にしておいてよかったなぁ。せっかくの日に「あいトリ」の話では、あまりにも不毛だからね。

 皆さんもぜひ面白そうな本を手に取ってくだされ。