駅の風景

 夕べ、読書会。課題図書は、寺澤捷年『和漢診療学 あたらしい漢方』(岩波新書)である。メンバーに50代が多いせいか、病気にまつわる話は盛り上がることこの上ない。いつもと違ってワシャは引き気味だったけどね。しかし、ついにはワシャの健康相談のようになってしまい、いい漢方医を教えてもらった。もう少し自分の「証」(患者の状態)が見極められるようになったら門を叩いてみるか。

 その後、刈谷駅前の某居酒屋に流れて反省会。1時間半ほどオダを上げ解散した。あ〜楽しかった。

 駅のコンコースで仲間と別れて、ワシャはJRの上り線へ降りる。今、電車は出ていったばかりなのか、ホームは閑散としていて、ワシャが並んだ番号のところには30代前半とおぼしきジーンズ姿の女性が先に立っていた。
 彼女が気になった。少し動きがおかしい。手を広げたり肩を回したり、体操のような動きとでもいうのだろうか、あまり夜のプラットホームで見かけないタイプである。もうひとつ気になったことがある。立っている位置が黄色い線の外側、つまり線路寄りに立っていたのだ。電車が入ってくると少し危ない位置だった。ワシャは、その後ろ1mくらいのところに並んでいるわけだが、「お嬢さん、もう少し後ろに立ったほうが安全ですよ」と声をかけようかな〜と悩む。こっちは酔っぱらいだし、「キャー!」とか言われたら嫌だもんね。それに若い女性に声をかけるのは、そもそも苦手だ。
 彼女は左肩から右側にショルダーバックを掛けている。肩紐がかなり太くシートベルトのようである。
「よし、彼女がよろけたり、なにか変な動きをしたら、あの肩紐をつかんで引き戻そう」
 そう考えた。でね、一応、距離感を計っておく。そうしておかないと、なにしろこちとら酔っぱらっているんでつかまえられないからね。ということで、両手を前に突きだして、件の女性の背中あたりで紐をつかむ仕草を繰り返す。中年オヤジである。痴漢に間違えられても言い訳できない。でも、気持ちは純粋だったんですぞ。女性に何か動きが合ったら、おさえて止められるように、半歩前に出て体勢をつくった。
 結局、なにも起こらず、彼女もワシャも無事に帰ったわけだが、そんなことがあった。