帰り道

 夕べの午後10時頃の話である。名古屋でイベントがあってその帰路のこと。金山から乗ったJRの快速はかなり混んでいた。ワシャは車両の中ほどの通路に立って窓に映る車内の様子を観察していた。
 そこで感じたのはガラスに映る女性はきれいに見えるということだった。「夜目遠目傘の内」と昔は言ったものだが、今は「車窓に反射する姿」を入れてもいい。ワシャの立っている正面の2シートには若いカップルが座っている。左手には対面の4シート。ワシャの方を向いて女性が2人座っている。もちろん恥ずかしがり屋のワシャは直見なんてできない。窓ガラスに映る顔を見ると、2人ともきれいなんですね。それで直見に切り替えたのだが、窓際の女性は普通の女性だった。どちらかと言えばおへちゃかなぁ。でもね、その娘、混んだ車内でただ一人文庫本を読んでいた。その娘の表情に知的さが加わって合格〜になった。
 通路側の女性は窓見もきれいだったが、直見もきれいな人だった。まつ毛の長い鼻筋の通った上品そうな顔立ちでんがな。その人はスマホをやっていたが、その指がしなやかで色っぽい。おっと左手の薬指に細い指輪がある。なるほど、匂い立つような色気はそういうことか。

 通路には何人かが立っている。スーツ姿の男性も二人いた。酔っている。金山でワシャの後に乗り込んできたから、駅周辺で飲んでいたのだろう。小声でなにやら話をしている。時たまこちらがずっこけるようなオヤジギャグをいう。
「今、どのあたりを走っているの?」
「共和(きょうわ)を過ぎました」
 JR東海道には共和という駅があるんですね。
「今日はよく飲んだね〜違うか〜」
 ワシャは小さくガクッとなった。なんというギャグだ。そして「違うか〜」なんて付け加えるんじゃない。どっ疲れが出てきた。

 見下ろせば、高校生くらいのカップルである。窓際の男の子は今日のデートに疲れたんだろう。すっかり熟睡している。女の子はワシャの眼下でスマホをいじっている。お?スマホ画面の文字がハングルだ。ほほお、それを知って窓際の少年の顔を見れば、確かに半島顔である。このカップルは朝鮮の子だったか……。

 誤解してもらっては困る。ワシャは韓国や北朝鮮のやり方に対していろいろと過激なことを言っているが、すべてを嫌悪しているわけではない。こうして静かにデートの余韻を楽しんでいる朝鮮の若者は見ていて微笑ましい。楽しい一日が過ごせましたか。おいしいものは食べましたか。いい思い出になるといいね。
 
 昨日のイベントのことである。内容が凄すぎて朝ちょこちょこっと書くなんてレベルではない。一日咀嚼をしてあらためて記録したいと思う。