岩倉の紙幣

 強引ですけど、火山つながりで、富士山の印刷された紙幣を話題にしたい。
現行だと千円札。野口英世の裏面に富士山が印刷してある。一世代前であれば五千円札に大きく芦ノ湖に映る富士山が描かれている。さらもう一世代前になると五百円札に山梨側からの霊峰の図柄であった。このあたりになると若い人は知らないでしょうね。表は蝶ネクタイをしめたけっこう人相の悪い人物が描かれてある。肖像の下に小さく「岩倉具視(いわくらともみ)」とあるので、この人が明治の元勲の一人の岩倉卿だとわかる。
 岩倉具視、もちろん明治をつくった功労者の一人であることは間違いない。しかし、顔を見てもそうなのだが、どうにも食えないオヤジで、二人の歴史的人物を抹殺してしまった黒幕でもある。一人は孝明天皇(これは諸説あるけれども)、もう一人は西郷隆盛だ。裏で物事を画策することに長けた老練な政治家ということなのだろう。
 明治6年、明治政府は三条実美を首班とする権力構造が出来上がっていた。とはいえ育ちのいい高級公家の三条はお飾りで、実権はその№2である岩倉が握っている。ここで善人の西郷は岩倉にはめられる。征韓論に始まるいわゆる「明治6年の政変」であった。
 政変の経緯はどうでもいい。仕掛けたのは岩倉で、これが10月22日、政変の敗北を知った西郷は翌日、つまり23日に「胸痛のわずらいこれあり、とても奉職にまかりあり候儀相叶わず」と辞表をだして下野をした。その間、1日である。 
 この潔さがいい。さすが大西郷。岩倉具視より西郷隆盛の紙幣があってもよさそうなものだが、ないんですよね、これが。