楽しい夜

 夕べ、地元で落語会があった。出演は笑福亭鶴光(つるこ)、鶴光の一番弟子の学光(がっこ)、五番弟子の竹三(ちくざ)の三人。いつもなら前座が出て、二つ目が上がって、真打登場となるのだが、竹三は二つ目で、学光は真打(上方落語なので真打とは言わないんですが)、それに学光と鶴光が二席つとめたので、かなりレベルの高い落語会となった。
 竹三のネタは『動物園』である。このネタはここの落語会ではよくかかる。男がアルバイトで動物園の虎になるという、いわゆる前座噺なのだが、二つ目だけあって竹三はうまい。
 学光の最初のネタは、老人ホームや福祉施設でやる痴呆症対策のリハビリ運動を客にやらせて笑いをとった。『千両の富くじ』『木津勘助』などのネタの持っている人なので古典を期待していたがちょっと残念。
 鶴光も一席目は雑談+歌謡舞踊と古典はかけない。二席つとめるので、客を飽きさせない工夫なのだろう。それにしても踊りもうまいなぁ。氷川きよしの「箱根八里の半次郎」にのって三番まで踊ったのだが、腰がきっちりと決まっている。
 この人、40歳を機に、大阪から東京落語に移って、一から再出発をしている。その頃から歌舞音曲に励み、東京の高座でもトリをつとめるようになった。「オールナイトニッポン」のDJとして脚光を浴びた頃とは、明らかに別物になっている。あの頃はあの頃で「ミッドナイトストーリー」なんかは楽しかった。今とは別物という意味でね(笑)。
 学光の二席目は、お得意の腹話術で、やっぱり古典をかけない。一席やってほしかったなぁ。
 鶴光の二席目は『試し酒』。一升酒を五盃呑むという、噺としては単純で奥行きがないものだが、五杯の酒を呑む間、客を引き付けておかなければならない。けっこう難しい演目である。これを鶴光、サラリーマン川柳をさらりと織り込みながら、だんだんに酔っていく姿を演じきった。
 久しぶりに大笑いをした夜だった。落語会の後、いつものとおり街へ出て仲間と一杯、これもまた楽しい。