夜半、喉のかわきで目を醒ます。闇の中でも、ぼんやりとものの形はわかるので、もう一度眠るというあわい期待もこめて灯りは点けなかった。
寝室から出て、手すりをたよりに階段を下りる。キッチンで水を飲み、ふと振り返ると、書庫が明るい。う〜ん、「明るい」というと言いすぎだなぁ。「ほんのりと明るい」くらいかな。でも、あきらかに明るく、書庫の入口がブルーに浮かび上がっている。誰かいるのだろうか。ワシャは忍び足で、書庫に近づいた。そして中を覗くと、な〜んだ、CDラジカセの表示窓の灯りが、書庫を青く照らしていただけだった。それにしても闇の中では、小さな光源でもけっこう強い光に感じる。
CDのスイッチを切った。一瞬、書庫が闇につつまれた。ところがカウンターの光源がなくなった途端に、今まで息をひそめていた小さな灯りたちが思い思いに主張を始めたのである。空気清浄器はオレンジに光っているし、テーブルタップのスイッチは赤く輝く。LANケーブルの差込口は緑色で点滅している。
「にぎやかなものだな」とか、感心していたら、しっかりと覚醒してしまった。仕方がない。本でも読むか。机の上のスタンドを点けたら、小さな光たちはあっという間に退散してしまった。