土漠の花(どばくのはな)

 11月1日の朝日新聞3面の記事下広告が、月村了衛『土漠の花』(幻冬舎)だった。
http://www.gentosha.co.jp/book/b8088.html
 コピーにやられた(苦笑)。
自衛隊は何を守るために戦うのか?自衛官は人を殺せるのか?」
 舞台は土漠のソマリア。そこで一人の現地人女性を守って自衛隊員たちの決死の撤退戦を描いたノンストップアクションである。朝食をとりながらこの本の広告を見て、コピーと土漠に立つ女のイラストに、心がグラリと動いた。
 ワシャはあまり小説を読まない。今年の購入実績だと、小説と小説以外で1対32くらいの割合になっている。基本的に小説は好きな作家以外、あまり買わない。図書館で借りて読めばそれで事足りるのである。借りて読んでみて余程おもしろければ購入することもあるけれど、そんな作品は何冊もない。
『土漠の花』もコピーに引かれたが、取りあえず図書館で検索してみた。およよ、予約が17人も入っている。そんなには待てない。ワシャは、本は読みたい時に読まないと読めなくなってしまう。仕方がない。「e−hon」を検索してみた。この時はまだそれほど買うつもりはなかったが、「11月1日現在で入荷待ち」の状況を見ると、急に欲しくなってしもうた。ずいぶん人気の本のようだ。あるいは朝日新聞の記事下広告をワシャと同じように見た人が反応しているのかもしれない。
 ううむ、こうなると意地になってくる。ちょうど1日が休みだったこともあって、早速郊外の大型書店に行ったんですよ。そこでようやく入手をしたというわけ。
 広告には秋元康さんと見城徹さんの書評が載っている。「幻冬舎の社長の見城さん」というところでピーンとこなければいけなかったのだが、意地になっていたので勘が鈍った。
秋元康、絶賛!読みはじめたら止まらなくなって、打ち合わせを二つ、キャンセルしてしまった。ぐいぐい引き込まれる。この小説は危険です。仕事や勉強、やらなくてはいけないことを片付けてからお読みください。】
見城徹、号泣!慟哭しながら読了し、自分の生き方を激しく問われた気がした。「死ぬ」ことと「生きる」ことは同義であると初めて納得した。僕も『土漠の花』の男たちのように生きたいと願う衝動を今も、抑えることが出来ない。】
 まず、読みはじめてすぐにすることができた。なにしろ血生臭い。お好きな人には合うのかもしれないが、ワシャには少しきつかった。だから秋元さんの言うように一気通貫にはならず、結局、4回に分けて読んだ。後半に1回だけジワリと涙がにじみそうになったが、『永遠の0』のように、泣きながら読むというようなことにはならなかった。
 一言で感想を言うと、『ダイハード』のマックレーン刑事を自衛隊のチームに置き換えた活劇を観ている、そんな印象だった。あるいは『戦国自衛隊』の現代海外版、『七人の侍ソマリア編といったところか。まぁ『ダイハード』よりユーモアがなく、『戦国自衛隊』よりも現実味はあるが、『七人の侍』よりも大味な話だった。
 ネタバレになってしまいますが、大団円で、主人公とヒロインが軍用輸送機の前で………はまさにハリウッドのアクション映画のお決まりのようなものですね(笑)。戦場に登場する自衛官も、みんないいヤツばかりで、いくらなんでもそんなことはないだろうと思ったのだった。
 でもそれなりにはおもしろかった。図書館の予約待ちでもよかったけれど、そうしたらおそらく完読できなかっただろう(笑)。