百歳の現役監督、新藤兼人さんが昨日お亡くなりになられた。まさに死ぬまで映画に没頭され、その創作意欲は年齢を重ねてもまったく衰えをみせなかった。98歳で「一枚のハガキ」を製作され、「周囲が許せば、もう一本、100歳の映画を撮りたい」とおっしゃっていた。すごい気力だ。
新藤さんが90歳の時に脚本・監督された「ふくろう」という作品がある。手元にそのシナリオがあるので、読みなおしてみた。それにしても、こんなみずみずしいシナリオがよく書けるものだと感心する。
死んでいるはずの男の手が、ユミエの足首を摑む。
ユミエ、びくともせず見下ろす。
サングラスをはずしたエミコ、驚愕。
男 A「よかった」
ユミエ「ありがとう」
男A、死ぬ。
母と娘、立って、母が頭のほうを、娘が脚を抱え、ヨイトマケ・ドッコイショと猫車に乗せて勝手口から外へ出ていく。
泣きなさい
笑いなさい
いつの日か
いつの日か
花を咲かそうよ
「花」の一節を歌って。
闇を飛ぶ梟。
ううむ、90歳にして、この感性……。新藤さんに比べれば、ワシャなんかはなたれ小僧だな。もっともっと勉強して頑張らなくちゃ、新藤さんの足元にも及ばない。
百年を走り続けてこられた名監督、どうぞごゆっくりお休みください。