星崎で美味い店見っけ! その2

(上から続く)
 あった。
 その店は住宅街の中にある小さな公園に面して建っていた。
 その店の隣に神社があり、その神社の杜に抱かれるようにして佇んでいる。
 見た目はRC造の立派な建物だ。蕎麦屋というより美術館といった風格がある。かなりお洒落な店構えで、これならばある一定以上の蕎麦が出てくるだろうと確信した。シックで機能的なデザイン自動ドアをくぐると、目の前で職人が蕎麦を打っている。ちょうど美術館の玄関を入ると、そこがガラス張りの工房になっていて、来訪者に、画家たちがデッサンや創作をする様子が見ることができる、ちょうどあんな感じだった。あとで知ったんだけど、17台の打ち場があるんだそうな。そこでの蕎麦打ちを見ながら奥に進むと階段があって、これもまさに美術館を彷彿とさせる高さでいえば3階分はありそうな長い幅広の階段があって、その先の天上に店があるのだ。
 店内は少し暗めになっている。その代わりカウンター越しに広く開いた窓一杯に神社の杜の新緑がまぶしい。

 メニューを見ると、1日限定20食の「田舎蕎麦」というのが目に入った。職人に「まだあるか」と問うと「ある」という。「じゃあそれをくれ」ということで待つこと15分。少し時間が掛かったが、出てきた蕎麦を見て納得しましたぞ。
 蕎麦は黒かった。なるほど、これは蕎麦の鬼殻まで挽き込んでいるんだね。それを太打ちに仕上げている。早速、ずるずるっと蕎麦を飲む。ところが太いので一気に飲み込めない。蕎麦は喉で味わうものだって志ん生に教わったから、ずっとそうやって蕎麦を食ってきたが、これは噛みましたぞ。噛まなきゃ喉を通っていかないんだから。
 噛んだら噛んだでまたびっくり。腰が凄い。この固さはただものではないぞ。そして噛めば噛むほど蕎麦の香りが口の中に広がっていく……。
久しぶりに美味い蕎麦だった。「サガミ」で騒いでいた子供たちに感謝をしなければいけない。お運びさんに頼んで、店のチラシをもらった。それを見れば結構有名な店ではありませんか。
「紗羅餐(さらざん)」
http://sarrasin.jp/
の本店だったのだ。美味いはずだわ紗。