日曜日に三重県津市まで出かけた。町をぶらぶら歩くのも楽しみなのだが、主たる目的は、三重県立美術館で開催されている「藤島武二・岡田三郎助展」に立ち寄ることである。絵画好きな友だちと連れ立って伊勢路の小旅行をしばし楽しんだ。
人間の心理というのは面白い。名古屋駅で東海道本線から関西本線のホームに移るだけで、風景が変わり旅情が沸いてくる。快速電車の旅でしかないのだが、なんだかウキウキしてくるから不思議だ。
さて、三重県津市である。通過したといえばこれほど頻繁に通過した場所もないだろう。電車で、自家用車で、観光バスで、何度、津市を通り過ぎたことか。まず伊勢神宮に参拝する時でしょ。松阪肉を食べに和田金に行く時も通る。明和町に陶芸仲間がいるのだが、そこで窯談義をする時も素通りした。大王崎のスケッチ旅行の時も津には寄らずじまいだ。
一度だけ津競艇に寄ったことがあるが、もちろん競艇場とその周辺しかしらない。津の中心部には縁がなかった。
今回は、いつもは下りないJR津駅に降りたった。JR津駅を東に出て……というか東にしか出られない。駅前にロータリーがあってその周りに銀行や証券会社が並んでいる。少し南に行くと、線路を跨ぐ歩道橋があり、そこを渡って西口に出た。西口は目の前に護国神社の杜があって、東口と比べると閑静な趣がある。
西口からは、北西に向かってだらだら坂が続く。この坂を10分程上ると道の左手に県立美術館が見えてくる。
すぐにでも美術館に入って、「あやめの女」や「朝顔の婦人」に逢いたいが、その前に、お昼時ということもあって、ちょっと寄りたいところがある。
美術館の北の交差点脇に蕎麦屋がある。「そば茶房 蕎麦彩」という店だ。ここの蕎麦が美味いという情報を得ていたので、まずは腹ごしらえということになった。友だちとカウンターに座って、天ザルをオーダーする。壁に10号ほどの水彩画が掛かっている。遠くに雪を頂いた山脈を置き、手前の里は、菜花の黄色や桃の花が咲く春の風景になっている。やさしい絵であり、どこそこ懐かしさを覚えるスケッチだった。
題を見れば、「信州伊那」ではあ〜りませんか。懐かしいどころか、しゅっちゅう目にしていた風景だった。ちょいとわけありでね、この4年ばかり伊那には通い詰めておりました。
おっと、時間が来てしまった。残念ながら「JAPANESE BEAUTY」にまで話が及ばなかった。というか蕎麦の話までたどり着けなかった。実は、今日は、医者に行かなければならないのじゃ。それでは美術展と蕎麦の話はまた後程ということで、行ってきます。