ワシャと呑んだことがある人には心当たりがあると思うけれど、ワシャは出てきた酒がまずいと感じたら呑まない。すぐに他のいい酒に変更する。
肴もそうだ。「さあ食え」とばかりに最初から並べられたものには手が動かない。お仕着せ料理がダメなのである。だから、ワシャは飲み放題食べ放題というのがどうにも性に合わない。
美味しいものが少しばかり、いい器にのせられて、好みの酒がチロリや信楽の徳利などで出てくれば、最高なのである。
ちょっと昔の話になるが、若い頃の上司がとても偏食で、美味い物しか食わないというわがままな男だった。愛読書は『美味しんぼ』、尊敬する人物は魯山人という人である。その人に、あちこち連れ回され、いろいろなものを食わされたものである。あの頃はまともに自宅に帰ったことはなかったなぁ……。でもね、この数年間にいい酒の味と、吟味された魚介の美味さを知った。
もう一つ運がよかったのは、地元にいい店があったことである。今は大将が引退して店そのものがなくなってしまったが、美味い魚を食わせる店だった。大将は、自ら釣りにいってその釣果を店で提供してくれる。たまにシロナガスクジラが釣れると、美味い尾のみの刺身を出してくれたっけ(わけないか)。河豚もクジラも鮟鱇も生シラスも好物だったなぁ。カウンター越しに、刺し身の良し悪しや、魚の食べ方、どんな酒と合わせると魚が活きるかなど、レクチャーを受けたものである。なにしろ授業料を払いながらなのでこっちも真剣だった(笑)。
このところの有名ホテルでの食材偽造問題
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/131022/waf13102221210043-n1.htm
に関連して、「たかじんのそこまで言って委員会」で政治評論家の加藤清隆さんがこんなエピソードを披露した。どこかで河豚刺しを注文して、明らかに違うものが出てきて「これ河豚じゃないじゃないか」とクレームをつけると、料理長がとんできて「ばれたのはあなたが初めてです」と謝ったという。その河豚刺しは河豚ではなくカワハギだったのだそうな。
えええ!てなもんですわ。河豚とカワハギではあきらかに違う。そんなものは喰うまでもなく見ただけでわかるわい。
要するに食べる側の資質が落ちたために、ホテルや料亭に客が舐められているということ。
ワシャは、回転寿司が巷に出始めの頃、物珍しさも手伝ってに一回だけ行ったことがある。しかし、それ以来足を運んだことはない。あのクルクル回って食材を移動する機械が一度で大嫌いになったのである。
ご存じないですか。ブロイラーを飼育している鶏舎を。その中を覗くと、機械化されたところは飼料が鶏のゲージの前を移動しているんですぞ。まるで回転寿司のように。ワシャは、その鶏あつかいがたまらず、二度と足を運んでいない。
どうせ寿司を食べるなら、近所の寿司屋でカウンターに座って、大将の薀蓄でも聴きながらちびりちびりやる方がいい。田舎の寿司屋なら、5000〜6000円ほどで済む。鶏あつかいされても3000円くらいかかるなら、ワシャは倍払ってもだんぜん普通の寿司屋に行きたい。
とはいえ、ものを味わう感覚などは種種雑多なのだ。インスタントラーメンやジャンク・フードばかり食べてきた人間と、ちゃんとした素材をきっちりと料理して味わってきた人間とが同じ嗜好になるわけがない。だから職人の握る寿司よりも回転寿司のが美味いという人がいてもいっこうに差し支えない。ただ、ワシャは回転寿司では美味いと感じないのだから仕方がないのであ〜る。