春の叙勲 その2

(上から続く)
 つまらない昔話をしてしまった。今日はそんなことが書きたかったのではない。勲章の話がしたかったのじゃ。
 倉本さんの授与される旭日小綬章は、旧制度では勲四等旭日小綬章と呼ばれるものである。大勲位から数えて5番目の等級になる。ほお、倉本さんほどの人物が5等勲章ですか。では、倉本さんよりも上等の人々は誰がいるかというと、旭日大綬章に政治家がずらりと並ぶ。あの「女は子供を産む機械」発言をとぼけた爺さん(柳澤伯夫)や、「教員がうつ病で休職するのは気が弱いからだ」発言をした金持ち爺さん(笹川尭)などなど、こいつらが倉本さんより上等な人だとは思えない。それに国家にとって有益だったとも思えぬ。官僚、首長、県議、市議がずらずらと倉本さんよりも上に並んでいる。きっと立派な仕事をした人たちなんだろうが、この人たちに救われた国民が果たして何人いるだろうか。
 76本のテレビドラマ、17本の映画、8本の演劇、70冊の著作……倉本さんの作品に救われた人間は何千万人になるだろう。
 何千万円もの報酬をもらいながら、それに見合うだけの仕事をしていたのか甚だ疑問な偉い人たちと私費を投じて若者を育てようと四半世紀にわたって孤軍奮闘した倉本さんと、どっちが上等なんだろう?
 前述した笹川さんのお父上が笹川良一であることはつとに有名だ。もちろん彼の御仁も勲章を得ている。それも勲一等瑞宝章である。
 この勲一等の宮中伝達式の際に、こんなエピソードがある。天皇陛下から勲章と勲記をいただくために経団連土光敏夫日商会頭の永野重雄ソニー井深大などに交じって笹川良一がいた。そのことに気がついた永野が「なぜ、こんな男と一緒に……」と周囲にもらしたといわれている。また、笹川良一の叙勲に抗議して、自らの勲章を返上した代議士もいた。
 当時、関係する政治家にカネをばら撒いて総理府章勲局に圧力をかけて得た勲章、強奪勲章と噂されたものである。
 はたしてこんな形で序列がつけられた勲章に価値があるのだろうか。