勲章、オラにもくんしょ

 今朝の新聞に「春の叙勲」名簿が載っている。写真付きでは小説家の宮本輝さんが「旭日小綬章」を受けられた。宮本さんの小説にはずいぶん癒された者であるので、心よりお祝いしたい。

 とはいいながら、今の叙勲制度にはいささか疑問を持っている。例えば今回は4298人が受章しているのだが、やはり政治家、公務員の名前が多いように思う。はたしてこの人たちは宮本輝さんよりも、人のためになっているのだろうかと疑問におもうのだ。

 まず勲章には序列が明確にある。上から大勲位菊花章頸飾、大勲位大綬章、これの該当者は今回いなかった。その次が旭日大綬章というもので、ここには最高裁判事、大企業会長、経団連会長、内閣官房副長官、電力会社社長が並ぶ。次いで瑞宝大綬章、ここまでがかつて勲一等と呼称されている勲章である。以下を位順に列記する。

(勲二等)旭日重光章、瑞宝重光章、(勲三等)旭日中綬章瑞宝中綬章、(勲四等)旭日小綬章瑞宝小綬章、(勲五等)旭日双光章、瑞宝双光章、(勲六等)旭日単光賞、瑞宝単光賞とつづく。大勲位を入れれば国民が8つの区分される。大勲位から勲六までで7区分、それにもらえない下々の者という8階級である。

 でも、それでいいと思っている。国のために、他者のために尽くした人に勲章を授ける、そのことに価値を見出す人には、強烈な鼻つら人参になるだろうから、その有効性は認める。しかし、わずかな期間だけ国会議員席に座っていただけの人物がなにをしたというのだろう。国から多大な金をあてがわれ、採決に投票だけしていたような人が「旭日中綬章」で勲三。宮本さんが、多くの読者に希望を与え、生きる意味を説き、娯楽を与えているのに勲四ですぜ。宮本さんの上位に、官僚、判事、首長、県議、市議がずらーっと居並んでいるが、皆様、立派な方なんでしょうが、どうしても宮本さんを基準に考えると、「違うよね」と思ってしまう。

 たまたま知っている名前が載っていたが、現職の頃はかなり灰汁の強いタイプで、要領はよかったがけっして信用できるタイプではなかった。また、他者に対して思いやるという人格からは程遠く、偉く見せたい偉ぶりたいというタイプで、とても尊敬に値するような人物ではなかった。確かに一定の地位まで上ってはいる。ただそれだけのことである。

 というか、叙勲名簿に載ってくる方々は大方がこのタイプではなかろうか。本当に国家のために命を擦り減らすような生き様を国民に見せてくれる人はめったに出あえるものではない。そして本当はそういった方にこそ、最大の感謝と敬意をこめて勲章をお渡ししたいものである。

 例えば、福島第1原発を守り抜いた吉田昌郎所長である。亡くなられてしまったけれど、こういった方に叙勲をすべきだと思っている。

 しかし、吉田さんが欲しがっただろうかねぇ(笑)。イチローも「国民栄誉賞」という表彰を蹴ってしまった。まぁ勲章や表彰を「ほうほう」言って喜ぶ輩も多いので、そういった連中の目くらまし、人参としての使い道もあろうから、特段、この制度には反対ではないけどね。