彼の国の写真集

 ワシャの書棚に『北朝鮮の日常風景』(コモンズ)という写真集がある。この本を見る限り北朝鮮という国はきわめて貧しい。
 形状がハーモニカに似ているところから「ハモニカ長屋」と呼ばれている庶民の住宅が写っている。トタンの屋根は歪み波をうち、外壁の塗装は剥げ落ちクラックがいたるところに入っている。1950年代に建てられたというバラックは、建てかえることが出来ずそのまま使われてきた。
 生活道路はすべて未舗装で、庶民の生活はいかにも不便そうに見える。
 列車は耐用年数をとっくに過ぎ、外装には錆が浮き、ゴテゴテに塗られたペンキは無残に剥がれ、窓枠は歪みガラスははまっていない。スクラップ同然の一般座席車は乗客がすし詰めなっている。窓枠から人があふれ、今にもこぼれ落ちそうだ。
「貨物車両に乗る人たち」と題された別の写真にはこんな説明文が付いている。
《この中国製貨物車両は、貨物輸送のために持ち込まれたものだ。しかし、車両をすぐに返さずに、濫用して壊れそうになってから返したので、中国から多くの抗議を受けた。》
 写真集のどのページからも極貧の生活がにじみ出ている。国民にこれほどの貧しさを強いている国家が核開発・ミサイル発射でもなかろうにと思うのだが、ブラフをかますことでしか国際社会の中で生き延びてゆく術がないのだろう。

 彼の国は2012年までに強盛大国を作ることを目標に掲げている。現実的には不可能なのだが、指導者たちはこの画餅を書き続けるしか、国体を維持する方法がないのだろう。2000万人の飢えた国民をなおざりにしてどこに行こうとしているのか。