本多勝一 その1

 月刊誌「WiLL」8月号に「本多勝一 疑惑の履歴書」という記事があり、興味深く読んだ。
 本多勝一元朝日新聞記者)との出会いは随分と昔だなぁ……小学生1年生の頃じゃから、かれこれ60年も昔のことになるかのう(嘘です)。ワシャ父の蔵書に本多勝一著『ニューギニア高地人』(朝日新聞社)という本があり、奥付に第2版昭和39年とあるので、その頃にはワシャ家にあったと思われる。巻頭にニューギニアの原住民の写真があったので興味をそそられてこっそりとその本を開いて見たものだ。
 文中に指切りの風習が紹介してあって、ダニ族の女が6本の指を欠損した手を広げて笑っている写真は強烈だった。かなり大きくなるまでニューギニアのイメージはその写真だったという記憶がある。それにしてもこの著者はたいへんなところで取材してきたんだなぁ、とある種の憧憬すら感じていたことも間違いない。
10年後、本多の別の著書を手に取った。かの悪名高い『中国の旅』である。ただその頃のワシャは世間知らずの若造で、まんまと本多のデマゴキーに乗せられてしまった。
「こげに悪かこつを日本軍は大陸で行ってきよったとですか」
 と思ったもんじゃ。
 でもね、文中に挿入された写真で「日本刀による斬殺」という、片手で日本刀を振り上げている日本兵(らしき処刑人)の写真を見たときには、「そんな斬首のやり方は日本にはないよな」と思ったという記憶がある。片手で刀を扱うというのは顕かに青竜刀の使い方なんだよね。日本刀は必ず両手で持つことは子どもでも知っている。それに今まさに斬首されようという状況にも関わらず、処刑される中国人は直立したままで、その上シャツの襟が立っているではないか。こんな処刑はない。首斬り朝右衛門でもこんな状況ではまともに首を落とせまい。小池一夫・作、小島剛夕・画『首斬り朝』をしっかりと読んでいないから、こんなマヌケな写真を掲載することになる。まぁ今では本多勝一の『中国の旅』に使われている写真がほとんどまがいものであることは、検証されてしまったけどね。
(下に続きます)