木戸番小屋

(下の「木戸を様子のいい男が通りぬけてゆく(笑)」から読んでね)

 木戸番の爺さんが、昼飯代わりにぼた餅を食っている。
 そこへ目つきのするどい男が顔を出す。
男「爺さん、ワシャ蔵を見なかったかい」
爺「昼ごろに戻るといっていなすったがまだ見えねえな」
 舌打ちする男。
爺「ところでおめえさんは誰だい?」
男「神田の頁次だ」
爺「ええ!あなたがなんだ神田の銭亀頁次親分ですかい」
頁次「爺さん、ワシャ蔵が立ち寄ったらおれに知らしちゃあくれめいか」
爺「ワシャ蔵が何か不始末でもやらかしたんでござんすかい」
頁次「いや、ちょっと訊きてえことがあるのさ」
爺「へいわかりやした」
頁次「頼んだぜ」

(つづく)