久々にワシャ蔵

 南町奉行所から飛び出してきた銭亀の親分は、数寄屋橋御門を通って、数寄屋川岸沿いの元数寄屋町の番屋に入った。
 中には草臥れた番太が一人、鍋のかかった火鉢を抱えて熱燗をつけている。
銭亀「おう、とっつあん、ワシャ蔵を見なかったかい」
番太「ワシャ蔵ですかい、4日前には霞ヶ関の坂に現われて、大名行列を見物していたそうですが、その後の行方は知りません」
銭亀「ほんとうに知らねえのかい。隠すとためにならねえよ」
番太「ほ、本当に知らないでさぁ」
銭亀「ほう、じゃぁその熱燗は誰ンだい」
番太「これはあっしのでさぁ」
銭亀「ほお、おめえたしか下戸だったじゃねえか、いつから飲めるようになったんだい」
番太「いやー、2〜3日前から突然飲めるようになりましてね」
銭亀「ほう、それは目出てえな。よしそんならオレが注いでやろう」
番太「いやいやお気遣いなく。手前でチビチビやりますんで」
銭亀「遠慮することはない。ほらぐい飲みを出さねえか、ほら、注いでやるから」
番太「いやいや、無理強いをなすっちゃいけません」
銭亀「なにを嫌がっているんだ、おめえ今酒を飲むと言ったぢゃねえかい」
番太「い、言いましたがね、なにもそんなにせっつかなくったって」
銭亀「好きなんだろ、好きなら飲むがいいや」

 さて、古くからおつきあいいただいている皆さんは、このあたりで押入れからワシャ蔵が出てくると思うでしょ。ところが出てこないんですね(笑)。

ワシャ蔵「(突然、床下から飛び出して)そんならあっしがいただきやす」

 過去の「ワシャ蔵シリーズ」はこちら。読むまでもないけれど。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20080227
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20080206
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20070328
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20060509