電車バカ男

 昨日、久しぶりに稀少動物を発見した。JRの普通電車でのことなんだが、4人掛けのシートの窓際に私と女の人が座っていた。私は買ったばかりの「売文生活(日垣隆著)」を読んでおり、女性は携帯をのぞいていた。まぁどこにでもある車内の風景でしょうね。ところが笠寺か大高あたりだったと記憶しているが、若者(男)が私のはす向かい女性の隣の席にどかっと腰を下ろし、空いている男の前の椅子(私の横)に靴のまま足を投げ出した。そしてしきりに携帯電話をかけているのである。注意しようと思ったが、小汚い金髪を総髪のようにのばし、不精髭にこれまた小汚い黒のダウンと破れたジーンズ、というようにいかにもやばそうな若者なので、刺されるのが嫌だったのと、最近、車内で他をはばからず大声で携帯している奴なんて珍しいでしょ、どんな話をするのか楽しみだったのでついつい観察してしまった。以下が会話・・・
「じゃあさ、じゃあさ、じゃあさ、じゃあさ、じゃあさ、じゃあさ、じゃあさ・・・もごもごもご」じゃあさが延々と続き、その後に会話となるのだが会話は小声でよく聞き取れない。
「きいて、きいて、きいて、きいて、きいて、きいて、きいて・・・もごもごもご」
「じゃあさじゃあさじゃあさじゃあさじゃあさじゃあさじゃあさ・・・」
 この男は必ずフレーズを7回繰り返すという話し方らしい。ボキャブラリーが貧困だ。そのことにだんだんと腹が立ってきたので、降車駅が近づいてきた頃合を見計らって「足を下ろしなさい!」とついに一喝してしまった。そんなことを言われたことがないのか、若者ははじめはキョトンとしていたが、「なにをなにをなにをなにをなにをなにをなにを言っているんだ、このおやじは・・・」と足りない頭で考えたんだろうね。そうしたら(10秒ほどか)理解できたんでしょう。恐ろしい形相で私を睨んで「ガルルルル」と本当に喉を鳴らしやがった。(お前はケダモノか!)
 私が怯まずに立ちあがると男はドカッと踏み鳴らすように足を下ろした。まだ不満そうに「ガルルルル」と喉を鳴らしていたので、そそくさと電車から降りた。君子あやうきに近寄らず、あ〜恐かった。でも絶滅危惧バカを見ることができて少しだけラッキーだった。