名古屋の大曽根にある「十州楼」という料亭である。創業は文政年間というから名古屋では老舗中の老舗だろう。
ここで普茶料理を堪能した。本物を知っている御仁は満足してくれたのだが、田舎者の親父が普茶料理を理解できない。精進料理である。だから肉、魚類は一切、使っていない。その代わりべらぼうに手の込んだ料理となっているにも関わらず、その料理が理解できないおっさんは、海苔と大豆、野菜を使って造った蒲焼を食ってこう宣うた。
「このウナギの蒲焼はぱさぱさしてうめえことはねえなぁ」おいおい、ウナギの蒲焼じゃないって。
「この梅干の天麩羅は、ちっとも酸っぱくねくてうめえことないなぁ」おいおい、その梅干の天麩羅は、自家製で漬け込んだ紀州梅をわざわざ3日の間、塩抜きをして、それを蜜で煮込んだものを天麩羅にしてあるんだぞ。おっさん!貧弱な自分の体験と薄っぺらな教養で大声でものを言うんじゃない。
パチンコ屋に行くのがおれの人生だ、と言っていた凡愚なおっさんは極めつけの普茶料理を「1500円か?」と評価してくれた。
眩暈がした。もう当分この手の人間とは口を利きたくない。