武士の情けなので、あえてどこの誰ということには触れない。
愛知県から見ると遠く西のほうの小さな自治体のことである。切れ者で真っ当な考えを持った若い市長が登場した。この市長と議会のやりとりがはなはだおもしろく、全国の市議会の中でもトップの視聴率を取っている。
市長が議員に対してまったく遠慮をしない。間の抜けた議員の質問に対して、厳しく訂正をし、糾弾をする。いや~ぁ、小気味のいいことといったらありゃしない。
でもね、今日指摘したいのはこの市長の事ではなく、市長と対峙する1期目の議員のことである。
御年71歳で1期目の議員である。定年までは市の部長を務めていた。と、するなら議会答弁も何度かしているだろうから、議会自体にも慣れていると思うのだが、これがちょっと違った。
まずは言葉遣いがおかしい。方言が出るのはやむを得ないが、その話し方が公的な場所でのそれではないのだ。なんだか、居酒屋で酔っ払ったオヤジが捲し立てているような印象を受ける。
さらに市長が度々指摘しているのだが、質問がまとまっておらず、すでに答弁した内容のことを何度も質している。質問時に腕組みをしているのも好感が持てない。
こんなのが「行政上がりの議員でござい」と幅を利かせているようでは、全国で職員から議員に転じたまじめな人たちに失礼だろう(笑)。
まぁでもこの程度以下の議員は全国にそれこそ何万といるので、それほど驚くべきことでもない。むしろここまでバカを晒しながらも、切れ味のいい市長に挑んで散っていく姿勢は他の無能な議員よりも少しマシかも。
全国のことなかれ首長たちは、上記の市長のように、議会とことを構えるようなことはしない。議会のご機嫌を取って波風を立てずに行政を動かしていくことを優先する。だから表面だっては極端な行政と議会との軋轢が目につかないんですね。こういうことなかれが存在する以上、議員の質がちっとも高まらないのは自明の理。行政側としてはそれで御の字なんですが(苦笑)。
東海地方の某市議会のことである。1年前の統一地方選で新たな議員が勢ぞろいした。前の期と比べると、かなり小ぶりな議員が揃ったという印象だ。
野党系で常に論陣を張っていた古参議員が県議に移ってしまった。さらに保守系を押さえていた比較的頭のいい長老議員が2人引退した。その後継と目されていた3期目を狙う中堅の議員はあっけなく落選し、1期生でものがいいと言われていた野党系議員も県議選に打って出たため市議は自動失職となっている。他にも特筆すべきヘンな議員がいたなぁ(遠い目)。
これらと入れ替わった新人議員を含む今期の議会の情況である。
まず保守系長老2人に替わるリーダーだが、これといった人材がいない。数人の古参がいるのだが、前任の2人に比べると政治力、交渉力でやや劣る。安倍派の5人衆のような感じですね。前任の長老は、「ヘンな議員」に保守系会派の運営を期待していたが、「ヘンな議員」は「ほかにやることがありますんで」と、長老の申し出を断って、次の選挙には出ず、さっさと引退してしまった。
さあ、困ったのが新議会である。昨日、ちょいとその議会関係者と話す機会があったんですがね、「もう、若手議員や女性議員が大変なんですわ」と愚痴をこぼす。
「なにが大変なのか?」と問うと、「議会での質問が適当過ぎる」と答える。「え?あんたの質問も大したことなかったじゃん」と思ったけれど、これは口に出さず、頷くのみにしておいた(笑)。
確かに、前期の7人がいなくなると、まともな質問を展開できる議員はいないね。これは執行部としてはやり易いかも。
だから東海地方某市の議会は視聴していても詰まらない。冒頭の、西の方の小さな自治体の議会は目が離せないのにね。
かつて某市議会で、古参のクセの強い議員が、打ち合わせ通りでないビーンボールの質問を投げてきたことがあった。担当部長は、それでもそのまま打ち合わせ済みの原稿を朗々と読み上げればよかったんだけど、それを思い切り打ち返してしまった。議員は現行通りに答弁されるものと思っていたのだが、正鵠を射る厳しい答弁だったために、二の句が継げず質問を終えた。他の議員たちからは拍手が起きたものである。
しかし、執行部側が収まらなかった。答弁書と違うことを部長が言ってしまったのである。その部長が副市長、企画部長らから糾弾されたのであった。
おそらく西の方の小さな自治体の市長であれば、褒めてくれたのではないかと思っている。
今、地方議会がマンネリ化、停滞化している。政治を市民の手に取り戻すためにも、議会の活性化は急務だと考える。だが、何十年と培われてきた「なあなあの土壌」は簡単には改良できないだろう。
その先駆けとなるのが安芸高田市であればいいと思う。あ、言っちゃった(笑)。