令和2年8月の市長選で、石丸伸二氏が安芸高田市長に就任して以来、議会がとても見ごたえのあるものになった。結構、SNSなどで評判をとっているので、皆さんもご存じですよね。
これは2月1日の産経新聞の記事。
《「燃やせるものは何でも燃やす」 地元メディア批判でSNS大反響、安芸高田市長の狙い》
https://www.sankei.com/article/20240201-FP5KE6FJPVJHNKEGFJA4D44QJA/
賛否はあるが、市公式チャンネルの登録者数が全国の自治体で最多というのは凄い。ワシャは安芸高田市議会の議事録で読んでいるが、これがめっちゃ楽しいんですわ。おそらく1700自治体の中でもダントツにエキサイティングというか・・・。市長の答弁回数が群を抜いて多く、これも全国トップではないだろうか。
市長も議員も、あらかじめ調整された原稿を読み上げる。ひどいところになると一般質問の一言一句まで執行部サイドが書いて渡している自治体もある。そういうのってすぐに見抜けてね(笑)、通常だと大きな質問が3~5で構成されているんだけど、それぞれを市の職員が手分けして書いていると、書き手のクセが文章に反映されるので、「おいおい、1問目と2問目の文体が違うで~」なんてことが見え見えだ。誰も聞いていないからいいようなものの、ワシャみたいに議事録を読むのが趣味みたいな嫌な住民がいると、即ばれちまうんですね。
でもね、そういったおまかせ議員が多いと、市側はとても楽で、全部仕込めるから苦労しないんですわ。だから、議員も執行部も原稿棒読み状態で、まさに学芸会のように議会が進んでいく。
その点で、安芸高田市はレベルが違っている。おそらく石丸市長が登場するまでは、そんなことはなく学芸会だったのだろう。ところが令和2年に、今までの基礎自治体の概念を突き破るような市長がやってきた。
強い首長というのはたまに出ることがある。例えば鹿児島県阿久根市の竹原信一氏や兵庫県明石市の泉房穂氏など。良し悪しはともかくとしてこの人たちは強かった。この系譜を継いで議会と対峙している希少な首長が石丸氏と言える。議会も自ずと臨戦態勢に入った。
これなんかもとても興味深い質疑が展開している。令和3年12月14日の一般質問である。
《安芸高田市議会》
https://www.youtube.com/watch?v=FYcUvq7SJr0
石丸市長と元議長だった5期目の議員のガチンコの質疑。若干、議員側に知識不足、勉強不足のところが見られるが、そりゃ相手が京大卒の市長でっせ。どうやっても知的レベルの差は歴然で、それでもよく踏みとどまって頑張っている。全国的に見ればこの議員は、平均点以上を取れる方であろう。少なくとも、原稿を見ずに市長とやり合っているからね。ワシャの知っている某議会なら、いわゆる保守系議員で、ここまで石丸市長に食い下がる力量を持った議員はいないと断言できまっせ(笑)。
さて、石丸市長側にも、議員側にも立たずに議会のやり取りを見てみたい。テーマは「市長の公約について」である。この質疑では「高所」という単語が7回出てくる。まずはこの言葉から掘り下げたい。
前日の他議員への答弁で、石丸市長が「大所高所から政策を・・・」というような流れで発言をされたのだろう。それを捉えて議員は言う。
「昨日も言われてましたけど、高所にあるんです。(市長の)目線が。市民の目線に下がってない。教育でもなんでもそう。子供の目線で言いなさいと、大人がその目線にならないと教育はできないんですよ」
議員は、市長の目線が高いから、市民の目線まで下がっていないから、子供の目線まで下げて教育施策をやれと言っている。
この主張は悪くない。しかし、市長の言う「高所大所」と議員の言う「高所」の意味合いが食い違っている。市長は「個々の小さなことにはとらわれない大きな視野・立場」と言いう意味で言っており、議員は「上から目線」といったニュアンスで口にしている。ここに齟齬が生じる。市長の言っている「高所大所」の意味をはき違えての質問は愚問だ。
次は市長の発言から見ていこう。
《協議の冒頭で、私が「国語力がない」(と言った)と仰ったんですが、事実に反します。会議の最終局面です。》
「国語力がない」って、それを議員に言っちゃあいけない。そもそも議員なんて本も読まず活字に親しまず・・・なんて輩ばっかりなんだから。「バカ」に面と向かって「バカ!」って言っているようなもの。
以前の話なんだけど、某市議会の一般質問で図書館の批判をした議員がいて、その人がどれほど図書館に通っているかというと「2年前に行った」ってさ。その程度で図書館サービスの質問をするんですぞ(驚)。
図書館に足しげく通い、資料集めなどをレファレンスサービスを使って効率よくやっている議員が、「僕の他に議員は来ているの?」と司書に尋ねたんだそうな。「イベント以外ではほぼ来ません」という回答で、その議員はひっくり返ったという。
残念ながら、普通のオジサンから議員になった人は「国語」というのは日本語を話せる程度のものでしかない。石丸市長、ど真ん中に剛速球を投げてしまった。
この議員も不勉強ながら頑張ってはいる。長老議員の意地でしょうか。しかし、相手を論破するには、それなりの勉強と経験が必要だ。残念ながら議員側の戦いは善戦にすらなっていない。
ここはしっかりと調査・取材し、自分の言葉で質問を論理的に組み立てられる議員が現れるのを待つべきではないだろうか。
市長にとんでもないのが来た。だったら議会にも凄いのを用意しないと。無理だと思うけど。
ぜひ、安芸高田市議会をお楽しみください(笑)。