魂を留める

 昨日の岸田首相の出席した衆院政治倫理審査会。ざっと確認させてもらったが中身はスッカスカ。それでも野党側の追及にしどろもどろになる首相は哀れだった。

 野田元首相に、岸田氏の政治資金パーティーでの巨額な売り上げの件を問い質されると「勉強会」と言い逃れるが、1回で3000万円の儲けが出る「勉強会」ってどんなことやってんだ?野田氏の追及も甘く、ついに支那人のパー券の大量購入には踏み込まずじまい。最後のところで、ルール違反である首相の政治資金パーティーについて「現職の間はやりませんね?」と質したが、「考えます」で逃げられた。

 

 そんな中身のない質疑より、ワシャにはこっちのほうが気になった。

岸田文雄首相「後来の種子未だ絶えず」吉田松陰の遺言引用 安倍晋三氏葬儀で昭恵さん言及》

https://www.sankei.com/article/20240229-HOJ6VWVHJZKVVMUGOAR35OZD2E/

 ニュースのタイトルにもあるように、安倍昭恵さんが安部晋三さんの葬儀挨拶で引かれた松陰の言葉を、こんなケチな場面で孫引きしやあがった。

衆院政治倫理審査会で、「後来の種子未だ絶えず」という幕末の志士・吉田松陰の言葉を引用し「今の政治を未来の政治に自信を持って、引き継いでいくことができるか」と訴えた。》

 この言葉、岸田首相のような人物が口にしてはならない重い言葉なのである。記事中にも説明があるが、ワシャの得意分野なのでちょいと説明させてもらうと、吉田松陰が刑死する前日に書いた『留魂録』と題した遺書である。ワシャの手元には『留魂録』(講談社学術文庫)、『日本の名著 吉田松陰』(中央公論社)、童門冬二『松陰語録』(致知出版社)などがあり、これらで読んでいる。

 吉田松陰が死ぬ前日にしたためた命がけの書、維新に向かってこれも命がけで働く後進のために書き残した魂の叫びなのである。

 誰が背後で原稿を書いているのか知らないが、日本史に残る名遺書を、ぼんやりと口にするんじゃないぞ。

 おそらくこれを口にできる首相は、安倍さんか鈴木貫太郎くらいのものだ。だから葬儀の際に昭恵夫人がこの言葉に触れることは正しい。郷土の偉人でもあるしね。

 それを歴代の中でも地に足の着いていない盆暗の筆頭が放つんじゃない。プッ。

 

「私の30年の寿命は尽きようとしていますが、それでも春夏秋冬を30年の中で経験しております。花を咲かせ、実を付けていると思います。それがもみ殻なのか、成熟した実なのかは私には判りません。同じ志をもつ皆さん、私の微かな思いを憐れんで、遺志を継いでやろうという人がいるのなら、それは将来への種がつながっていうということで、いつしか豊作の時代を迎えることができると信じて、今を恥じることはありません。松下村塾の同志たちよ、維新を目指す仲間たちよ、このことをしっかりと考えてくれ」

 かなり意訳ではあるが、松陰はこんなことを久坂玄瑞高杉晋作、伊藤利助の名を挙げて後輩たちに檄を飛ばしている(山県有朋の名はない)。

 この松陰の言葉が、維新の回天を生み出していく。松陰が時代の転轍機を大きく動かしたのである。

 そんなすげえ言葉なんですよ。それを首相になることだけが目的の阿呆、国家・国民より人事を考えたいと断言する愚者が、皮肉の為とはいえ軽々に口にするんじゃない。泉下で松陰や安倍さんが泣いているぞ。