《松本潤の大河「どうする家康」視聴率は歴代ワースト2確定的 紅白でのセレモニーもなしの〝無残〟》
https://news.yahoo.co.jp/articles/84cae09aacc00a9e6867053c99d04c23ac9fad78
このニュース、「でしょうね」と言うのが本音のところ。「紅白でのセレモニー」については、紅白をずっと見ていないのでどうでもいい。「歴代ワースト2」について私見を述べる。
ワシャは西三河在住なので、まさに家康、三河武士団の地域で生活をしている。それに歴史好きだから、とくに戦国期から江戸時代はけっこう得意である。
本棚には『徳川実紀』(吉川弘文館)は正・続で全17巻、『改正三河後風土記』(秋田書店)上中下巻、『三河物語』(ニュートンプレス)上下巻、家康研究の泰斗である中村孝也先生の『家康の族葉』『家康の臣僚 武将篇』(硯文社)、『徳川家康文書の研究』(日本學術振興會)なども収まっている。
その中でも注目すべきは中村先生の『家康の族葉』で、その第5章が「妻妾」編となっており、その最初が「築山殿関口氏」(有村架純の演じた「瀬名」)となっている。
先生は言う。「家康と築山殿の結婚は相互の不幸であった」と。家康についての記述が膨大に残っていることに比べ、築山殿に関する文献がほとんどない。とくに今回の大河ドラマのように「平和を愛し戦乱の終結を切望し、民百姓を慈しみ、家康につくし、慈母観音のような妻・・・というような事実はどこをひっくり返しても出てこない。NHK大河ドラマが「ファンタジー」ならばそれでもいいけれど、多くの視聴者が「これが歴史なんだ」と思ってしまうことに違和感を抱いた。中村先生の文章を引く。
《若し関口氏(築山殿)をして、賢明にして善良なる性格の婦人たらしめたならば》
まず、ここまで。今回、家康の妻(瀬名・築山殿)を演じた有村架純は、全登場人物の中でも完璧に賢明で善良なる婦人だった。
いくら400年の時を経ているとはいえ、本当にそういった人物であったなら、その片鱗が歴史のどこかに残るもの。例えば家臣の手紙の中にだとか、伝承として「こういった善行を積んでいた」とか。それがまったく残っていない。先生の文章を続ける。
《隣国の若き不幸なる城主(家康)に対し、正確なる理解と温かな同情を以て、よき慰めの天使となり、信頼せられる協力者となって、夫君を授けて大業を成就せしめ、琴瑟(きんしつ)相和して芳名を後世に残すこともできたでもあろう。》
その人物と敵対する勢力が多くとも、徳があれば、何かしらの痕跡が残るものである。いくら、その人物を毛嫌いする輩が歴史から消し去ろうとしても。
残念ながら現存する資料に依れば、築山殿には不利な憶測しか出てこない。このことについて先生はこう言っている。
《これらの推測は、彼女にとって不利なことばかりであるが、彼女の行動は、そのような推測は間違っているという反証を与えることができない。》
残念ながら歴史的資料にはないことだからである。繰り返すが、「どうする家康」がファンタジーなら問題ない。しかし、「時代考証」に学者が名を連ねている。それにしてはお粗末だった。
あの時代を見た人はいない。しかし残された文献や調査・発掘などで明らかになった事実を踏まえると見えてくることがある。それらを総合したものが現時点での正しい歴史認識というものではないだろうか。
最初は期待していた。三河一向一揆くらいまではつまらない脚本にも我慢して見ていたが、築山殿の描かれ方があまりにも作為的に過ぎ、家康の前ではしゃぎ、遠慮せずに評定に口を出してくる有村築山殿に、辟易とし始めたのだ。
そもそも戦国時代に男女共同参画はない。いや、戦場で頑張った女人もいるけれど、少なくとも松平家周辺にはいなかった。
今後は、この手の歴史捏造ものをやるならば、まったく名前を替えて恩田伸仲(おんだのびなか)、登呂富筆吉(とろとみふでよし)、時川家蓮(ときがわいえはす)とかにしてもらいたい。地名も歩張(ぽはり)の国、蜜柑和(みかんわ)の国と架空の国でやってくだされ。
《『どうする家康』北川景子演じる茶々が吐き捨てた最期の台詞にSNS震撼「現代日本そのもの」》
https://news.yahoo.co.jp/articles/5e4f85b113375d3c6472619e2043b14e219c825b
北川茶々は評判がいいようだが、これもあり得ない落城話だった。燃え盛る大阪城で秀頼や家臣は自害して果て、茶々だけが炎の中で、まるで本能寺の信長のような最期を遂げるシーンである。
そもそも茶々が最後になること自体がおかしい。家臣らが、主君(秀頼)や一族の死に殉じるため追腹(おいばら)を切るのである。それが江戸初期までの武家のルールだった。なんでご母堂が生きているのに周りの家臣が死んでいなくなっているの?
ニュースはこう言っている。
《息子・秀頼の最期を見届けた後、燃え上がる大坂城と血まみれの顔で鬼気迫る演技を披露。「つまらぬ国になるであろう」「正々堂々と戦うこともせず万事長きものに巻かれ、人目ばかりを気にし、陰でのみ嫉み、あざける」「やさしくて、卑屈な、かよわき者の国に」と最期の言葉を吐き捨て、自害した。》
大阪の陣以降、本格的にパクストクガワーナが始まるわけだが、その時代にどれほど多くの文化が花開いたことか。けっして「つまらぬ国」にはならなかった。「正々堂々と戦った」から明治維新があったわけだし、日清・日露・大東亜だって正々堂々と戦った。その歴史を脇に置いて、自民党政権だけに嫌味を言ったわけですね。でも、ファンタジーだったから、視聴者は興味を示さなかった。残念でした。
蛇足です。
淀君に先んじて(?)淀君の面前で切腹をする侍がいた。それが何枚も着込んだ着物の上から切腹しているけれど、それじゃぁまともに腹は切れない。せめて衣を分けて直腹に刃を立てないと。
もう「時代考証」なんかクソくらえの歴史大河でしたね(笑)。