現在、午後2時30分。朝から地元と神社の注連縄づくりに駆り出され、本殿の大注連縄と、鳥居に下げる細いもの計2本を4時間かけて造ってきた。もち米の藁を「選(すぐ)る」ところから始める。神社に「千歯扱(こ)き」があって、それを据えて藁束を千歯に引っ掛けて、こく。きれいになった藁を揃えて、一握りくらいごとに「藁打木槌(わらうちきづち)」で叩いて柔らかくする。これをワシャは1時間半ぐらいやった。手が抜けない性格なので、腕が抜けそうになった。握力はほぼなくなり、腕の関節に痛みが出ていた。それでも、その程度では藁の山はちっとも低くならない。交代しながらなんとか半分の藁を叩き、それを10人がかりで巻いていく。これに力が要る。ワシャなんか優男(やさおとこ)だから、こんなことを半日やっていると、身体はもうガタガタですわ。それでもまだ筋肉痛は出ていない。この歳になるとだいたい2日後か3日後に痛み出すんですね(泣)。
さて、ゴジラの話である。
先日、『ゴジラ-1.0』を観に行ってきた。これがすごかった。ワシャは最初の昭和29年のゴジラからほとんどのゴジラ映画を鑑賞してきた。昭和29年の『ゴジラ』や昭和30年の『ゴジラの逆襲』などは、生まれる前の作品なのだが、子供心にしっかりと見た記憶がある。おそらくリバイバルで観たんだと思うが、なにしろ恐い映画だったので印象深く覚えている。以降、アンギラス、モスラ、キングギドラ、エビラ、ミニラなどなど、いろいろな怪獣も登場して、ゴジラシリーズは29作続くわけだが、
この『ゴジラ-1.0』は、ワシャの中では第1作に拮抗するトップ作品と言っていい。山崎貢監督(脚本・VFX)の仕事は大したものだ。この歳になって、スクリーンを観ながら「映画の世界で働くのもいいな」と、青臭い高校生のような気分にさせられた。
いいところを列挙する。物語がいい。登場人物がそれぞれ立っている。セリフがいい。ゴジラが恐く、動きがリアル。昭和20年の風景がいい。登場する兵器が歴史好きにはたまりません。
まず、物語からいこう。プロローグがいい。
特攻に出た敷島少尉は、ゼロ戦の不具合で大戸島に不時着する。大戸島というのが第1作にも出てくる島で、それを使うのが憎いねぇ。第1作を知っているオールドファンには「お!」と思わせる島名なのだ。
そしてゼロ戦、特攻、不時着とくれば、『永遠の0』ですわなぁ。大戸島に海面すれすれで飛ぶゼロ戦。それがまさに『永遠の0』の宮部久蔵に機体を変えられて命を託された大石少尉の機影と重なった。ここでもう泣いていた。
大戸島でのゴジラとの闘いも、物語後半への多くの伏線を潜ませてあって、泣いている場合ではなかった。あまり話すとネタバレになるのでこのあたりにしておくけれど、怪獣映画でこれほど肌理の細かいものを観たことがない。
登場人物である。
主人公の敷島を演じた神木隆之介がいい。朝ドラでは植物学者を演じていたが、ピンとこなかった。だが、敷島少尉――神木のキャラからすると学徒兵のような印象もあるが、射撃の上手さに着目するとベテラン航空兵ということなぁ?――のいろいろな局面での目の演技がよかった。目に背負っているものがにじんでいる。こんな演技ができる俳優だとは思わなかった。今後、注目していきたい。
山田裕貴、安藤サクラ、佐々木蔵之介もいい演技を見せてくれた。佐々木は知的な二枚目から、こういった泥臭い役にシフトしていくと、いい役者になりそうだ。
セリフもよかったが、手元にシナリオがないので、詳細なことが言えない。『ゴジラ-1.0』のシナリオの発刊を期待する。
ゴジラは歴代の中でもリアルさでは断トツだろう。その存在感は圧倒的なのだが、それでいて人間ドラマを邪魔しない。メチャメチャうまい立ち位置なのだ。欲を言うと小さな漁船の「新生丸」に、海面から頭と背びれを出して迫ってくるゴジラの目がかわいいのだ。もう少し凶悪な目が欲しかった。山崎監督のVFXの技量ゆえ、ゴジラの動きはスムーズで、人間と同じ画面に入ってもその動きはリアルで恐い。また、昭和20年の銀座の風景も、破壊される東京も大きなスクリーンで見ることに価値がある。この作品は映画館でもなければならない逸品だ。
そして登場する兵器である。
まずは「18試局地戦闘機・震電」、神木少尉が、ゴジラに特攻をする航空機で、実際に終戦の直前に試験飛行に成功している。戦時中の戦闘機がすべてプロペラを前、あるいは翼に装着してるのだが、「震電」は尾翼後方(要は尻)にプロペラがある。これをゴジラ戦に持ってくるか~!昭和の歴史好き、日本軍兵器好きにとってはたまりませんぞ。
昭和45年の『文藝春秋臨時増刊 日本航空戦記』に「震電」のイラストが載っていて、これを見たワルシャワ少年は、「なんじゃこりゃ~!」と松田優作ばりに驚いたのでした。だって、それまでの戦闘機の概念を覆すような機体だったからね。
「震電」でびっくらこいていたら、次に出てきた艦艇で腰を抜かしましたぞ。椅子に座っていたからよかったけど(笑)。
「雪風」である。
駆逐艦「雪風」が登場した。陽炎級駆逐艦でその横っ腹には「ユキカゼ」と白ペンキで書かれている。間違いなく「雪風」だ。兄弟艦は17隻あるが、終戦まで生き残ったのは「雪風」だけだった。というか、日本連合艦隊のほとんどの艦船がアメリカの餌食になった中、大海戦に常に出陣しながら、最後まで生き残ったという本多平八郎のような駆逐艦である。
もちろんワシャは「雪風」の実物を見たことはない。しかし、呉市海事歴史科学館で購入した『日本海軍艦艇写真集 駆逐艦』に1ページを使った大きな写真が掲載されている。その舷側(げんそく)には「ユキカゼ」と白字で書かれてある。この伝説の駆逐艦がゴジラと戦うのである。これが感激せずにいられますかってんだ。
テレビではGACKTを駆り出して「飛んで埼玉」の番宣ばかりをやっている。『ゴジラ-1.0』の宣伝などほぼ目にしない。そりゃあそうだ(笑)。うすらサヨクのテレビ局がもっとも嫌いな『永遠の0』の続編のようなかたちといい、主人公の特攻兵くずれが格好良く、大東亜戦争時の兵器も出てくるとなると、なかなか宣伝がし難いのかもね。でも、うすら共でもすなおに感動すると思う今日この頃なのでした。
ああ、今日も長くなってしまった(謝)。