更生について

障がい者施設に「更生」使わないで 誤解や偏見招くと当事者団体が名称変更求める》

https://news.yahoo.co.jp/articles/538538530b28dec1e080af91ae5ed8ccdb0904a7

 このニュースが読み取れない。障害者施設に「更生」という言葉を使用するなと、障害者団体が主張しているわけね。記事の説明が中途半端なんだよね。

《団体のメンバーらは、「更生」という言葉には「改める」という意味合いがあり、障害がある人に対する誤解と偏見を招く恐れがあるとしています。そのうえで、「これから生まれる障がい者が後悔しない名前をつけてほしい」「人権の尊重を県民に伝える上で名称は大きな役割がある」などと訴えた》

 もう少し詳しく書けよ、琉球放送。まぁそれでも何とか文面を判断すると、「更生」という言葉が障害者を差別しているから使うなと言っているわけだな。

「更生」を左系の広辞苑で引いてみる。

「①いきかえること。よみがえること。蘇生。②反省・信仰などによって心持が根本的に変化すること。過去を清算し、生活態度を改めること。③不用品に手を加えて、再び利用できるようにすること」

 例示に「更生保護」があって、「犯罪者や非行少年が社会の中で健全な社会人として更生するように指導・援助すること」と説明されている。なるほど、「障害者をこれと一緒にするな」といういわゆる「言葉狩り」をしているわだね。

日本国語大辞典』でも「更生」という言葉を調べてみた。そうすると遡ること「荘子(そうじ)」の中に出てくることが判明した。「達生(たつせい)篇 第十九」の冒頭に出てくる。これね、ワシャも読めないので飛ばしてくだされ。

「夫欲免為形者、莫如棄世、棄世則無累、無累則正平,正平則與彼更生,更生則幾矣」

 ワシャは漢籍に詳しくないが、本は持っているので早速『荘子』(岩波文庫)に当たった。そこから上記フレーズの訳文を引く。

「夫欲免為形者」=「そこで肉体のためにあくせくすることをやめたいと思うなら」

「莫如棄世」=「世間を棄てるのが第一である」

「棄世則無累」=「世間を棄てればめんどうなわずらいはなくなり」

「無累則正平」=「わずらいがなくなれば〔心身も〕平正になり」

「正平則與彼更生」=「平正であればあのひろい世界とともに新たに生まれかわる」

「更生則幾矣」=「新たに生まれかわれば〔窮極の立場に〕ゆきついたことになる」

 ううむ、金谷治先生の訳でもよく解らないぞい。ちょっと意訳してみる。

「長く生きたいとか、健康でありたいと、いろいろ努力することをやめたいと思うなら、世間の常識から離れることが重要だ。世間から離れれば煩わしいこともなくなり、煩わしさから解放されれば、心身共に自然の世界に新生するのである。新生すれば煩わしさを祓うことができる」

「幾」の解釈で、金谷先生の訳「ゆきつく」ではピンとこず、白川静先生の『字統』から「祓う」を使った。

 

 ひえええ~、調べ出したらどんどんはまっていく。ニュースからかなりすっ飛んでしまった。思い出した。「更生」のことだった。

 少なくとも『荘子』まで辿ってゆけば、「更生」は奥の深い言葉であり、非行少年が立ち直る程度の狭い概念ではない。

 上っ面だけを捉えて「障害者を犯罪者と同列に扱うな!」と猛り狂う連中の浅はかなことといったらありゃしない。極めて近視眼的に狭い範囲でしか「更生」を見ていない。己たちこそ、障害者を差別してるんじゃないのか?「更生」という言葉はいろいろなところで使われており、全国に「更生病院」という医療機関が幾つもある。これらは非行少年ばかりを扱う病院じゃないぞ。障害者だって通ってくる普通の病院だ。これも名前を変えろってっか?

荘子』まで立ち戻って言葉というものを考えて見ろや。深い言葉をテメエらのイデオロギーで簡単に詰まらなく染め変えてんじゃねえぞ。

 

 このニュースは「琉球放送」が作っているんだけど、配信しているのは「TBS」だった。やっぱりその筋だった(笑)。