火野正平さん

 火野正平さんの番組に「にっぽん縦断 こころ旅」
http://www.nhk.or.jp/kokorotabi/route_2014spring/20140612/index.html
というのがある。火野さんが「チャリオ」と命名した自転車とともに、日本全国を走る旅の企画だ。
 昨日の訪問先は、新潟県の山間の田んぼだった。通称は「板谷の田んぼ」。それは地名ではなく「板谷さんちの田んぼ」という意味らしい。
 見ている人は知っていると思うけれど、火野さんが視聴者から寄せられた「心の風景」についての手紙を読んで目的地を決める。その場所、「板谷の田んぼ」はお酒とタバコが大好きだった祖父の思い出の風景だと書いてあった。
 トウチャコしたところは小高い丘の上、それでも田んぼに水が湛えられているので、ここより高いところがあるのだろう。でも周囲が開けて見下ろせる小高い場所だった。
 そこに手紙の主の祖父が仕事の合間にタバコをくゆらせた桜の木があって、手紙には「正平さん、そこでハイライトを吸ってきて下さい」と書いてあった。
 それに対しての正平さんのリアクション。
「番組で吸うのはひやひやしているんだ」
 と、戸惑っている。要するにテレビでタバコなどを吸うと、またぞろ禁煙原理主義者というか、禁煙ファッショどもからのクレームが面倒くさいのだ。
「でも、お手紙のリクエストだから……」
 そう言いながら、ポケットからハイライトを取り出して、一本をくわえて火を点ける。きれいな空気と煙をわっと吸い込んで、少しためて、青空に白い煙を吐き出す。20年来タバコを吸っていないワシャが見ても、うまそうなタバコだった。
 こういうものにクレームをつける連中の気がしれない。テレビのこちら側にいるワシャらにはなんの迷惑もかからないから、放っておいてくれという話。
 もちろん、スクリーンをはさんであっちこっちも同じことである。ジブリの『風立ちぬ』の喫煙シーンに因縁をつけてきた禁煙ファシズム団体があったでしょ。あれだって、観客席側に副流煙が流れてくるわけではないし、煙の絵が嫌なら、おまえら見なきゃいいということだわさ。
 傍若無人な喫煙者はいる。車の窓から火のついたタバコを捨てたり、ワシャの職場の近くにある公園など、捨てられた吸殻だらけである。そういった輩は断固排除すべきだ。しかし、それはすべての喫煙者の自由を奪っていいというものではない。

 なにしろ板谷の田んぼで一服をした火野正平さんの姿は、こちらの心までほっこりとさせるものだった。